ATR設定と使い方:期間14より比較本数が効いた
ATRの計算、期間14の意味、MT4・TradingViewでの表示方法を解説。USD/JPYの720回検証では、期間よりATRを何本前と比べるかで損益差と取引回数が大きく変わりました。
ATR(Average True Range、平均的な真の値幅)は、価格が1本あたりどれくらい動いているかを測る指標です。上昇と下降を区別せず、窓開けも含めた値幅を1本の線にします。
期間14が既定値として広く使われています。しかし、USD/JPYで期間5〜50、比較する本数1〜20、ATR上昇中と低下中を組み合わせた60設定を測ると、期間より「何本前のATRと比べるか」で結果が大きく変わりました。 1時間足の1本比較は2024年平均−562.6pips、2025年平均−1,149.2pipsです。
期間20・10本比較・ATR低下中は、1時間足で2024年+3,022.6pips、2025年+2,184.5pipsでした。一方、既定値に近い期間14・5本比較・ATR上昇中は−639.6pipsと−393.1pipsです。期間20を万能設定とする結果ではなく、ATRの期間だけを変えても読み方の違いは埋まりませんでした。
ATRは何を測っているのか
ATRは、まず各ローソク足のTrue Range(真の値幅)を求めます。次の3つで最も大きい値です。
- 当日の高値 − 安値
- 当日の高値と前の終値の差
- 当日の安値と前の終値の差
高値と安値だけなら10pipsでも、前の終値から離れて始まれば、その空白を含むほうがTrue Rangeになります。MetaTrader 5公式ヘルプも同じ3候補を示しています。
FormiqのATRは、Wilder式で平滑化します。期間をNとすると、新しいTrue Rangeの重みは1/N、前のATRの重みは(N−1)/Nです。
| 期間 | 新しい足の重み | 古い影響が半分になるまで |
|---|---|---|
| 5 | 20.0% | 3.11本 |
| 14 | 7.1% | 9.35本 |
| 50 | 2.0% | 34.31本 |
期間14は「直近14本の単純平均」ではありません。新しい足を7.1%ずつ取り込み、過去の影響を少しずつ薄めます。
ATRには売買方向がない
True Rangeは3候補を絶対値で比べるため、ATRは0未満になりません。暴落でも急騰でも値幅が広がれば上がります。TradingView公式ガイドも、ATRは価格方向を示さず、ボラティリティだけを測ると説明しています。
そこで本検証は、ATRだけで買いと売りを決めていません。ATRが指定本数前より上昇または低下しているとき、同じ本数で価格が上がっていれば買い、下がっていれば売りとしました。決済は逆方向の条件です。
ATRの設定と読み方
ATRは価格チャートの下の別枠に、1本の線で表示されます。RSIの30・70のような標準水準線はありません。
| 画面 | 追加方法 |
|---|---|
| MT4 / MT5 | 挿入 → インディケータ → オシレーター → Average True Range |
| TradingView | インジケーター検索でAverage True Rangeを追加 |
| Formiq | インジケーター一覧からATRを追加 |
表示側の設定
| 項目 | 既定値 | 意味 |
|---|---|---|
| 期間 | 14 | True Rangeを平滑化する速さ |
| 線の色・太さ | 画面による | ATR線の見た目だけを変える |
MetaTrader標準ATRの計算項目は期間だけです。TradingViewは期間14に加えて、平滑化をRMA・SMA・EMA・WMAから選べます。Formiqは期間と線の見た目を設定し、計算はWilder式に固定しています。
バックテスト側の設定
| 項目 | 初期値 | 売買での意味 |
|---|---|---|
| 読み方 | ATR上昇中 | 指定本数前よりATRが上か下か |
| 期間 | 14 | ATR線の反応速度 |
| 比較する本数 | 5 | ATRと価格を何本前から比べるか |
一般的な読み方は、ATR上昇を値動きの拡大、ATR低下を値動きの縮小として使う方法です。ただしATR上昇だけでは買いと売りが決まらないので、価格方向、ブレイク、移動平均線などを別に必要とします。
今回の60設定では、期間を変えても平均取引回数は1時間足2025年で815〜828回に収まりました。比較本数は1本の1,569.8回から20本の337.8回まで減りました。売買頻度を大きく変えたのはATR期間ではなく比較本数でした。
検証の条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 通貨ペア | USD/JPY |
| 期間 | 2025年。2024年を同条件で比較し、2025年前半・後半も分割 |
| 時間足 | 15分足・1時間足・4時間足 |
| 読み方 | ATR上昇中/ATR低下中。価格方向は同じ比較本数の終値差 |
| ATR期間 | 5・10・14・20・30・50 |
| 比較本数 | 1・3・5・10・20 |
| 設定数 | 1区分60設定、3時間足×4期間区分で720回 |
| 決済 | 反対シグナル。エントリーと決済は同じルールセット |
| 約定 | 終値、スプレッド0.3pips固定、0.1ロット |
| 損切り・利確 | 主比較ではなし。別に測定 |
損益は約定価格からpipsへ再計算しました。
1時間足は29/60設定が両年黒字
2024年と2025年の両方で黒字だった設定数です。
| 時間足 | 2024年黒字 | 2025年黒字 | 両年黒字 | 2024年中央値 | 2025年中央値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 15分足 | 24/60 | 9/60 | 6/60 | −312.8 | −1,205.8 |
| 1時間足 | 36/60 | 39/60 | 29/60 | +532.5 | +954.9 |
| 4時間足 | 50/60 | 22/60 | 22/60 | +1,674.2 | −711.6 |
1時間足だけは両年とも中央値が黒字でした。15分足は取引回数が多く、60設定の中央値が両年赤字です。4時間足は2024年の50/60から2025年の22/60へ反転しました。
期間より比較本数で損益差が広がった
1時間足の60設定を、比較本数ごとに12設定ずつ平均しました。
| 比較本数 | 2024年平均損益 | 2025年平均損益 | 2025年平均取引回数 |
|---|---|---|---|
| 1 | −562.6 | −1,149.2 | 1,569.8 |
| 3 | +794.5 | +1,146.4 | 940.8 |
| 5 | +163.4 | +676.6 | 727.0 |
| 10 | +869.6 | −40.6 | 517.8 |
| 20 | +773.9 | +856.9 | 337.8 |
1本比較は両年とも赤字で、取引回数は20本比較の4.6倍でした。ATRが1本前より少し上か下かを毎足読み直すと、売買が増えすぎます。
期間別の平均取引回数は2025年に815〜828回でほぼ同じでした。平均損益の首位は2024年が期間5の+743.5pips、2025年も期間5の+561.7pipsですが、期間30は−106.2pipsから+310.3pipsへ入れ替わり、期間14も+475.2pipsから+200.0pipsへ縮みました。14が特別に強い結果は出ていません。
ATR低下中は両年の平均が黒字
| 読み方 | 2024年平均損益 | 2024年黒字 | 2025年平均損益 | 2025年黒字 |
|---|---|---|---|---|
| ATR上昇中 | −97.9 | 13/30 | +245.9 | 19/30 |
| ATR低下中 | +913.5 | 23/30 | +350.1 | 20/30 |
「値動きが拡大しているときに方向へ乗る」という読み方は、2024年の平均が赤字でした。ATR低下中のほうが両年で平均黒字ですが、2025年の黒字数は20/30対19/30でほぼ同じです。増減だけで最良設定を決める差ではありません。
単年1位を翌年へ移すと2つは赤字になった
各時間足で一方の年の最良設定を、もう一方の年へそのまま当てました。
| 時間足 | 選んだ年 | 設定 | 選んだ年 | 相手の年 |
|---|---|---|---|---|
| 15分足 | 2025 | 上昇・10・10 | +1,226.1 | 2024年 +970.0 |
| 15分足 | 2024 | 上昇・14・20 | +2,503.8 | 2025年 −738.7 |
| 1時間足 | 2025 | 低下・10・5 | +2,541.7 | 2024年 +341.8 |
| 1時間足 | 2024 | 低下・20・10 | +3,022.6 | 2025年 +2,184.5 |
| 4時間足 | 2025 | 低下・10・3 | +2,809.6 | 2024年 +2,359.1 |
| 4時間足 | 2024 | 低下・5・1 | +4,225.7 | 2025年 −596.7 |
6件中2件が翌年赤字です。1時間足の2025年首位は2024年にも+341.8pipsでしたが、2024年の60設定中央値+532.5pipsを下回りました。
1時間足の「低下・期間20・10本比較」は2025年前半+1,166.9pips、後半+993.5pipsで、年内も両方黒字でした。単年1位の移植がすべて失敗したわけではありませんが、期間20だけを抜き出すのではなく、ATR低下中・10本比較・1時間足まで一組で読む必要があります。
期間14・5本比較・ATR上昇中は両年赤字
チャートの既定期間14に、初期比較5本を組み合わせた実測です。
| 時間足 | 年 | 取引回数 | 勝率 | 年間損益 |
|---|---|---|---|---|
| 15分足 | 2024 | 2,111 | 35.20% | +68.4pips |
| 15分足 | 2025 | 2,292 | 33.77% | −807.1pips |
| 1時間足 | 2024 | 577 | 34.32% | −639.6pips |
| 1時間足 | 2025 | 574 | 32.40% | −393.1pips |
| 4時間足 | 2024 | 127 | 35.43% | −558.6pips |
| 4時間足 | 2025 | 139 | 37.41% | −860.1pips |
期間14が一般的でも、「ATR上昇中に価格方向へ乗る」売買ルールの既定値にはなりません。6区分で黒字は15分足2024年の1つだけでした。
勝率35%台でも平均利益が平均損失を上回った
両年黒字だった1時間足の「低下・期間20・10本比較」を見ます。
| 年 | 取引回数 | 勝率 | 平均利益 | 平均損失 | 年間損益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024 | 628 | 35.51% | +54.66pips | −22.63pips | +3,022.6pips |
| 2025 | 601 | 36.94% | +51.75pips | −24.55pips | +2,184.5pips |
勝率は4割未満ですが、平均利益が平均損失の2倍を超えました。ATR設定を勝率だけで比べると、この損益幅の差が消えます。
ADXと損切り利確は両年の損益を増やさなかった
同じ「低下・期間20・10本比較・1時間足」に条件を足しました。
| 追加条件 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| なし | +3,022.6 | +2,184.5 |
| ADX(14)が20以上 | +646.9 | −572.2 |
| 24本で時間決済 | +2,840.5 | +2,482.2 |
| 損切り50・利確100 | +2,942.2 | +1,472.7 |
| 損切りATR1倍・利確ATR2倍 | +1,940.0 | +554.9 |
| 損切りATR2倍・利確ATR3倍 | +1,456.6 | +1,151.7 |
24本決済は2025年を+297.7pips増やしましたが、2024年を−182.1pips減らしました。ADXと4つの損切り利確は、どれも両年の基準値を上回っていません。
ATRで損切り幅を変動させても、自動的に固定pipsより良くなるわけではありません。ATRは距離の単位を相場の値幅へ合わせますが、出口の優位性までは作りません。
601回の売買ではスプレッド1pipsで600.9pips減る
2025年の同じ設定です。
| スプレッド | 取引回数 | 年間損益 |
|---|---|---|
| 0 | 601 | +2,364.7pips |
| 0.3 | 601 | +2,184.5pips |
| 1.0 | 601 | +1,763.8pips |
| 2.0 | 601 | +1,162.8pips |
損益分岐は3.93pipsです。コストは取引回数×スプレッドで減り、1本比較のように売買回数が増える設定ほど先に不利になります。
関連記事
補足
- 対象期間は2024年1月1日〜2025年12月31日。2025年は前半・後半にも分割しました
- 約定は終値、スプレッドは主比較で0.3pips固定です
- ATRはWilder式で、各期間の前にウォームアップを置いています
- MetaTrader・TradingView・Formiqでは平滑化方式や利用できる設定が異なるため、別実装へ数値を移すときは方式を確認してください
よくある質問
- ATRのおすすめ設定は何期間ですか?
- 表示だけなら一般的な既定値は14期間です。ただしUSD/JPYの1時間足で期間5・10・14・20・30・50を比べると、期間の平均損益順位は2024年と2025年で揃いませんでした。ATRを価格方向の確認に使う今回のルールでは、期間より何本前と比べるかの差が大きく、1本比較は両年とも平均赤字でした。
- ATRが上がると買いですか?
- いいえ。ATRは値幅を測るため、上昇と下降のどちらでも上がります。この記事ではATRの増減条件が成立したとき、同じ本数で価格が上がっていれば買い、下がっていれば売りとし、売買方向を価格から与えました。
- ATRは何pipsなら高いですか?
- 時間足を固定しないと答えられません。2025年のUSD/JPYでATR(14)の中央値は15分足11.21pips、1時間足23.48pips、4時間足48.90pipsでした。同じ14期間でも計算する実時間が違います。
- ATR上昇中と低下中はどちらが良かったですか?
- 1時間足の30設定ずつを平均すると、ATR低下中は2024年+913.5pips、2025年+350.1pips、ATR上昇中は−97.9pipsと+245.9pipsでした。ただし2025年の黒字数は19/30対20/30で近く、増減だけで設定を決められる差ではありません。
- ATRはMT4・MT5に標準搭載されていますか?
- はい。MT4・MT5では挿入→インディケータ→オシレーター→Average True Rangeから追加でき、初期期間は14です。価格チャートの下に1本の線が出ます。TradingViewとFormiqにも標準搭載されています。
Formiqは、リプレイ練習とノーコードバックテストをブラウザだけで使える無料のFXツールです。 チャートを開く、または無料プランでできることをご覧ください。