スーパートレンドの設定は倍率だけ:ドル円36通り検証
スーパートレンドの期間と倍率を36通り組み合わせ、ドル円の2025年と2024年でバックテストしました。期間がほとんど何もしていないこと、倍率だけが取引回数と損益を動かすことを実測値で示します。
スーパートレンドは「10と3」という2つの数字とセットで紹介されます。ATRの期間が10、その倍率が3。どちらも同じくらい大事なつまみに見えます。
実際に両方を動かしてみました。ドル円の2025年(1月1日〜12月31日)で、期間6通り × 倍率6通りの36通りをバックテストし、時間足を3つ、比較のために2024年でも同じ36通りを回しています。
結果を先に書きます。期間はほとんど何もしていませんでした。 1時間足で期間を5から30まで6倍に広げても、年間の取引回数は102回から106回の間です。損益の平均も200pipsの幅しか動きません。
動かしていたのは倍率のほうでした。1.5から5に変えると、取引回数は204回から40回へ5倍の幅で動きます。
スーパートレンドが計算していること
- ATR(平均的な値幅)を期間N本ぶん求める ← ここが「期間」
- 中値(高値と安値の平均)から、ATR × 倍率だけ上下に離したバンドを引く ← ここが「倍率」
- 価格がバンドを抜けた側でトレンドの向きを判定し、線がその反対側に付いてくる
2つのつまみが同じ量に効いているように見えますが、効き方が違います。
- 期間を変えると、ATRの計算に使う本数が変わります。ただしドル円のATRは期間5でも期間30でも近い値になるので、バンドの幅はあまり変わりません
- 倍率を変えると、そのATRに掛ける数がそのまま変わります。バンドの幅が直接変わります
バンドの幅が変われば、価格が抜ける頻度が変わります。だから倍率だけが取引回数を動かします。
実測でもそのとおりになりました。冒頭の図がその比較です。
| つまみの値 | 期間を変えた場合の年間回数 | 倍率を変えた場合の年間回数 |
|---|---|---|
| 1番目 | 期間5 → 106回 | 倍率1.5 → 204回 |
| 2番目 | 期間7 → 104回 | 倍率2 → 145回 |
| 3番目 | 期間10 → 103回 | 倍率2.5 → 101回 |
| 4番目 | 期間14 → 102回 | 倍率3 → 79回 |
| 5番目 | 期間20 → 103回 | 倍率4 → 52回 |
| 6番目 | 期間30 → 104回 | 倍率5 → 40回 |
(1時間足・2025年。それぞれ、もう一方のつまみ6通り全部で平均した値)
期間の列は102〜106に収まり、倍率の列は40〜204です。
チャートに表示する方法
| 環境 | 手順 |
|---|---|
| MT4 / MT5 | 標準では入っていない。配布されている .ex4/.mq4 を MQL4/Indicators(MT5は MQL5/Indicators)に置いて再起動する |
| TradingView | インジケーター検索で「Supertrend」を選ぶ |
| ブラウザ(Formiq) | インジケーター一覧から選ぶ。期間と倍率を設定から変更できる |
検証の条件
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 通貨ペア | 米ドル/円 |
| 期間 | 2025-01-01 〜 2025-12-31(比較用に2024年も同条件) |
| 時間足 | 15分足 / 1時間足 / 4時間足 |
| 検証本数 | 1時間足で6,226本(2025年)。15分足24,903本、4時間足1,610本 |
| 買い | スーパートレンドが上向きに転換した足の終値 |
| 売り | 下向きに転換した足の終値 |
| 決済 | 反対側への転換のみ。損切り・利確・時間決済は使わない |
| スプレッド | 0.3pips(スリッページ0、0.1ロット) |
| 試した組み合わせ | 期間6種(5〜30)× 倍率6種(1.5〜5)= 36通り。時間足ごと・年ごとに実行 |
| 測定 | Formiqのバックテスト機能で実行し、1トレードずつの約定価格からpipsを再集計 |
36通りを全部並べる
1時間足の36通りを、2025年と2024年で並べたものです。
数字で見ると次のようになります(1時間足・2025年・単位はpips)。
| 期間\倍率 | 1.5 | 2 | 2.5 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5 | −63 | +185 | +963 | +504 | +572 | +287 |
| 7 | −32 | +171 | +545 | +534 | +404 | +139 |
| 10 | −10 | −95 | +363 | +561 | +511 | +152 |
| 14 | −43 | +249 | +455 | +337 | +790 | +245 |
| 20 | +215 | −64 | +444 | −71 | +662 | +61 |
| 30 | +537 | −157 | +908 | −149 | +652 | +23 |
縦(期間)に読んでも規則が出てきません。横(倍率)に読むと、倍率1.5の列だけがほぼ全部ゼロ付近か赤字で、2.5と4の列が良い、という傾向が見えます。
2024年は同じ表がこうなります。
| 期間\倍率 | 1.5 | 2 | 2.5 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5 | +961 | +1,649 | +1,333 | +1,202 | −41 | +1,458 |
| 7 | +1,499 | +1,641 | +941 | +1,062 | +59 | +1,468 |
| 10 | +1,575 | +1,488 | +647 | +1,350 | +325 | +1,791 |
| 14 | +1,494 | +539 | +653 | +1,543 | −35 | +1,870 |
| 20 | +1,675 | +360 | +699 | +863 | −170 | +221 |
| 30 | +1,881 | +577 | +652 | +656 | +752 | +679 |
2024年はほぼ全面が黒字で、倍率1.5の列が最も良い。2025年で最も悪かった列です。倍率の効き方すら年で入れ替わっています。
| 倍率 | 2025年の平均損益 | 2024年の平均損益 | 年間回数 |
|---|---|---|---|
| 1.5 | +101pips | +1,514pips | 204回 |
| 2 | +48pips | +1,042pips | 145回 |
| 2.5 | +613pips | +821pips | 101回 |
| 3 | +286pips | +1,113pips | 79回 |
| 4 | +599pips | +148pips | 52回 |
| 5 | +151pips | +1,248pips | 40回 |
既定値はどうだったか
| 期間10・倍率3 | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|
| 15分足 | 330回・勝率35.45%・+563.0pips(6位) | 1,725.6pips(2位) |
| 1時間足 | 76回・勝率46.05%・+560.7pips(7位) | 1,349.6pips(14位) |
| 4時間足 | 21回・勝率52.38%・−101.4pips(16位) | 2,231.3pips(6位) |
15分足と1時間足では、既定値はどちらの年も黒字で、どちらの年も上位でした。この検証シリーズで扱った4つの指標のうち、既定値がこれだけ安定していたのはスーパートレンドだけです。
一方で、その年の最良を追いかけると外れます。2025年の1位(期間5・倍率2.5)は2024年に15位、2024年の1位(期間30・倍率1.5)は2025年に9位。順位相関は1時間足で−0.231、15分足で+0.242です。
4時間足で起きたこと
| 時間足 | 2025年に黒字 | 2024年に黒字 | 両方の年で黒字 | 順位相関 |
|---|---|---|---|---|
| 15分足 | 26 / 36 | 31 / 36 | 24 / 36 | +0.242 |
| 1時間足 | 27 / 36 | 33 / 36 | 24 / 36 | −0.231 |
| 4時間足 | 10 / 36 | 30 / 36 | 4 / 36 | −0.552 |
4時間足だけが崩れます。そして崩れ方には理由があります。
2024年の4時間足で最も成績が良かったのは期間30・倍率5でした。
| 2024年 | 2025年 | |
|---|---|---|
| トレード回数 | 8回 | 15回 |
| 勝率 | 62.50% | — |
| プロフィットファクター | 5.780 | — |
| 損益 | +2,457.9pips | −1,162.5pips |
8回です。プロフィットファクター5.78という数字は、8回のうち5勝したという以上の意味を持ちません。翌年は−1,162.5pipsで36通り中33位でした。
4時間足の36通りは年間8〜55回しかトレードしません。倍率を上げるほど回数が減り、倍率5の行は年間5〜15回まで落ちます。**倍率5・4時間足の組み合わせは構造的に「数字が大きく振れる設定」**です。良く見えたときほど疑うべき領域です。
コストへの強さ
回数が少ないことは、この指標の実用上の利点でもあります。
| 指標(1時間足・2025年) | 年間の取引回数 | スプレッド0→2.0pipsで失うpips |
|---|---|---|
| スーパートレンド 10/3 | 76回 | 152pips |
| アルーン 25・クロス | 115回 | 230pips |
| QQE 17/3/4.236 | 233回 | 466pips |
| RVI 10 | 547回 | 1,094pips |
失う額は、どの指標でも取引回数 × スプレッドにぴったり一致します。スーパートレンドは同じ条件で最も回数が少ないため、コストの影響が最小でした。
| スプレッド | 1時間足 10/3(76回) | 15分足 10/3(330回) |
|---|---|---|
| 0.0pips | +583.5 | +662.0 |
| 0.3pips | +560.7 | +563.0 |
| 1.0pips | +507.5 | +332.0 |
| 2.0pips | +431.5 | +2.0 |
1時間足は2.0pipsのスプレッドでも+431.5pipsを残します。15分足は2.0pipsでちょうどゼロになりました。
勝率とフィルター
1時間足・2025年で、勝率と損益の順位相関は0.668でした。この検証シリーズで扱った指標の中では最も高い値です(QQEは0.078、アルーンは0.614)。勝率が高い設定ほど損益も良い傾向があります。
ただし方向が逆の相関もあります。取引回数と損益の相関は−0.322。回数が少ない設定ほど損益が良い、という関係です。倍率を上げる(=回数を減らす)ことが勝率と損益を同時に上げていた、と読めます。
フィルターを既定値に足すとこうなります。
| 条件 | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|
| スーパートレンドのみ | 76回・勝率46.05%・+560.7pips | 78回・勝率51.28%・+1,349.6pips |
| ADX 20以上 | 52回・勝率48.08%・+364.2pips | 53回・勝率35.85%・+896.4pips |
| ADX 30以上 | 26回・勝率53.85%・+345.6pips | 27回・勝率33.33%・−153.5pips |
| 東京時間のみ | 38回・勝率39.47%・+88.2pips | 41回・勝率34.15%・−275.1pips |
| ロンドン・NY時間のみ | 64回・勝率43.75%・+721.8pips | 62回・勝率43.55%・+1,722.9pips |
ADXは両方の年で損益を下げました。トレンドの強さで絞るフィルターを、すでにトレンドフォローである指標に重ねても、削るのは利益のほうだったということです。
ロンドン・NY時間のフィルターは両方の年で改善しました(+721.8/+1,722.9pips、いずれもフィルターなしを上回る)。これはこのシリーズで初めて、両方の年で一貫して効いたフィルターです。
損切りと利確
| 決済ルール | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|
| 反対への転換のみ | 76回・勝率46.05%・+560.7pips | 78回・勝率51.28%・+1,349.6pips |
| 損切り100 / 利確200 | 87回・勝率47.13%・+1,729.7pips | 89回・勝率32.58%・+363.9pips |
| 損切り50 / 利確100 | 115回・勝率39.13%・+676.9pips | 114回・勝率36.84%・+369.9pips |
| 損切り50 / 利確50 | 129回・勝率54.26%・+649.2pips | 132回・勝率51.52%・+449.2pips |
| 24本で時間決済 | 110回・勝率51.82%・+1,419.4pips | 116回・勝率45.69%・+497.6pips |
5通りすべてが両方の年で黒字です。これもこのシリーズで初めてでした。ただし2024年に限ると、どの決済ルールも「反対への転換のみ」の+1,349.6pipsに届きません。転換まで持つことがこの指標の設計であり、途中で切ると利益の一部を捨てる形になります。
損切り50/利確50は勝率を両方の年で50%台に乗せます(54.26%/51.52%)。損益は増えませんが、勝率の見た目は安定します。
この検証で言えること
- 期間はほとんど効いていない。 5から30まで6倍にしても回数は102〜106回。ATRの期間を変えてもバンドの幅がほとんど変わらないためです
- 効いているのは倍率だけ。 1.5から5で回数が204回から40回へ。ただし最適な倍率は年で入れ替わります(2025年は2.5と4、2024年は1.5)
- 既定値の10・3が両方の年で上位。 15分足6位/2位、1時間足7位/14位。この4指標の検証で最も安定した既定値でした
- 4時間足は避ける。 両方の年で黒字は36通り中4通り。年間8〜55回では数字が振れすぎます
- 回数が少ないことがコスト耐性になる。 1時間足でスプレッド2.0pipsでも黒字を保った唯一の設定群です
- ロンドン・NY時間の絞り込みは両方の年で効いた。 このシリーズで初めて年をまたいで一貫したフィルターでした
同じ方法で調べたQQE・アルーン・RVI・移動平均線クロスの記事もあります。プログラミングなしで条件を組むなら、この表と同じことを自分の通貨ペアで確かめられます。
この検証の限界
- 通貨ペアは米ドル/円のみ、期間は2024年と2025年の2年だけです
- スーパートレンドの実装はATRの計算方法(単純平均かWilderか)とバンドの追従ルールで差が出ます。この数値はFormiqの実装によるものです
- エントリーも決済も足の終値で行っています
- スプレッドは全期間0.3pips固定として計算しています
- 4時間足は年間8〜55回です。この件数の勝率やPFは、そもそも幅の広い数字です
- 2025年のドル円は年初157.227・年末156.670(−56pips)で値幅1,900pips、2024年は+1,632pipsの上昇で値幅2,237pipsでした。トレンドフォロー指標にとってこの2年の性格差は大きく、2024年のほうが有利な年だった可能性があります
- 時間帯によって値動きの大きさは変わります。時間フィルターの結果はその影響を受けています
よくある質問
- スーパートレンドの最強設定は何ですか?
- ドル円・1時間足・2025年で最も損益が良かったのは期間5・倍率2.5(100回で+963.2pips)ですが、2024年では36通り中15位です。2024年の1位だった期間30・倍率1.5は2025年に9位(+536.5pips)。既定値の10・3は2025年+560.7pips(7位)、2024年+1,349.6pips(14位)で、どちらの年も上位かつ黒字でした。
- スーパートレンドの期間と倍率、どちらが重要ですか?
- 倍率です。1時間足で期間を5から30まで変えても年間の取引回数は102〜106回でほとんど動きませんが、倍率を1.5から5に変えると204回から40回へ5倍の幅で動きます。損益の平均も、期間による差が2025年で200pipsなのに対し、倍率による差は565pipsでした。
- スーパートレンドはどの時間足がいいですか?
- この検証では15分足と1時間足がどちらも36通り中24通りが両方の年で黒字でした。4時間足は2024年に30/36が黒字だったのに2025年は10/36で、順位相関は−0.55です。4時間足は年間20〜25回しかトレードしないため、数字の振れ幅がそもそも大きくなります。
- スーパートレンドの勝率はどのくらいですか?
- 1時間足・2025年の36通りで37.07%〜48.72%でした。トレンドフォローなので勝率は50%を下回り、勝ちトレードの平均が負けトレードより大きいことで利益が出ます。ただしこの指標では勝率と損益の順位相関が0.668と高く、勝率が高い設定ほど損益も良い傾向がありました。
- スーパートレンドはMT4に標準で入っていますか?
- 入っていません。配布されている .ex4/.mq4 を MQL4/Indicators に置いて再起動します。MT5も標準では入っていません。TradingViewはインジケーター検索から「Supertrend」を追加できます。Formiqのチャートには入っていて、期間と倍率を設定から変更できます。
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