アルーンの期間と時間足:84通りの設定を検証
アルーン(Aroon)の期間・判定方法・水準を84通り組み合わせ、ドル円の2025年と2024年でバックテストしました。クロスと水準どちらが機能したか、4時間足で起きた符号の反転まで実測値で載せています。
アルーン(Aroon)は、直近の高値と安値が「何本前についたか」だけを見る指標です。値動きの大きさも、勢いも見ません。時間しか見ない。
その素直さが効くのか、それとも足りないのか。ドル円の2025年(1月1日〜12月31日)で、期間・判定方法・水準を組み合わせた84通りをひとつずつバックテストしました。時間足は15分足・1時間足・4時間足の3つ、比較のために2024年でも同じ84通りを回しています。
結果を先に書きます。アルーン単体は、この2年のドル円ではかなり弱い指標でした。 1時間足・2025年で黒字になったのは84通り中43通り、損益の中央値は+6pipsです。ほぼコイン投げでした。
さらに、4時間足で2024年に+4,091.3pipsだった期間40・水準70は、2025年に−1,664.5pipsでした。 4時間足全体でも、黒字設定は2024年の61通りから2025年の17通りへ減っています。
アルーンが測っているもの
アルーンは2本の線でできています。
- アルーン・アップ:直近N本の中で、最高値をつけてから何本経ったか。今日が最高値なら100、N本前が最高値なら0
- アルーン・ダウン:同じことを最安値で
上げ相場では高値が更新され続けるのでアップが100付近に張り付き、ダウンは下がります。下げ相場では逆です。どちらも「時間」しか測っていません。 値幅もボラティリティも入りません。
読み方は2つあります。
| 判定方法 | 買いのタイミング | 特徴 |
|---|---|---|
| クロス | アップがダウンを上抜けた足 | 「その瞬間」に1回だけ発生する出来事 |
| 水準 | アップが基準値以上・ダウンが基準値未満 | 条件を満たしている「状態」。満たしている間ずっと成立する |
同じ2本の線を使っても、クロスは線が交差した瞬間だけ売買し、水準判定は条件を満たしている間ずっと成立します。そこで、クロスと水準判定を別々の売買ルールとして検証しました。
設定するパラメータは3つです。
| パラメータ | 値を上げると何が起きるか |
|---|---|
| 期間 | 高値・安値を探す範囲が広がる。線の反転が減り、シグナルが減る |
| 判定方法 | クロスか水準か(数値ではなく選択) |
| 水準 | 水準判定のときの基準値。上げるほど条件が厳しくなり、シグナルが減る |
チャートに表示する方法
| 環境 | 手順 |
|---|---|
| MT4 | 標準では入っていない。配布されている .ex4/.mq4 を MQL4/Indicators に置いて再起動する |
| MT5 | 標準で入っている。ナビゲーターの「Oscillators」から追加する |
| TradingView | インジケーター検索で「Aroon」を選ぶ |
| ブラウザ(Formiq) | インジケーター一覧から選ぶ。期間は設定から変更できる |
検証の条件
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 通貨ペア | 米ドル/円 |
| 期間 | 2025-01-01 〜 2025-12-31(比較用に2024年も同条件) |
| 時間足 | 15分足 / 1時間足 / 4時間足 |
| 検証本数 | 1時間足で6,226本(2025年)。15分足24,903本、4時間足1,610本 |
| 買い(クロス) | アップがダウンを上抜けた足の終値 |
| 買い(水準) | アップが基準値以上かつダウンが基準値未満 |
| 売り | 上記の反対 |
| 決済 | 反対側の判定成立のみ。損切り・利確・時間決済は使わない。反対側が成立した足で同時にドテンする |
| スプレッド | 0.3pips(スリッページ0、0.1ロット) |
| 試した組み合わせ | 期間12種(7〜75)×〔クロス、または水準6種(50〜100)〕= 84通り。時間足ごと・年ごとに実行 |
| 測定 | Formiqのバックテスト機能で実行し、1トレードずつの約定価格からpipsを再集計 |
どの時間足で使えるか
| 時間足 | 年 | 黒字設定 | 損益中央値 | 両年とも黒字 |
|---|---|---|---|---|
| 15分足 | 2025 | 63 / 84 | +452pips | 48 / 84 |
| 15分足 | 2024 | 63 / 84 | +1,955pips | 48 / 84 |
| 1時間足 | 2025 | 43 / 84 | +6pips | 33 / 84 |
| 1時間足 | 2024 | 63 / 84 | +1,429pips | 33 / 84 |
| 4時間足 | 2025 | 17 / 84 | −1,207pips | 3 / 84 |
| 4時間足 | 2024 | 61 / 84 | +1,649pips | 3 / 84 |
4時間足の行を2回見てください。2024年は84通り中61通りが黒字で中央値+1,649pips、2025年は17通りしか黒字にならず中央値−1,207pipsです。1年で1位から最下位へ変わり、両方の年で黒字だったのは84通り中3通りだけでした。
時間足を下げるほど結果が良くなるのがアルーンの特徴です。15分足は両方の年で黒字が多く(48/84)、両方の年の中央値もプラスでした。この点は他の多くの指標と逆で、あとのコストの節でその理由の一部が出てきます。
4時間足の好成績は本物か
取引回数が少なく、そのまま受け取れる数字ではありませんでした。2024年の4時間足で最も成績が良かったのは、期間40・水準70の設定でした。
| 年 | トレード回数 | 勝率 | PF | 損益 |
|---|---|---|---|---|
| 2024 | 27回 | 62.96% | 4.335 | +4,091.3pips |
| 2025 | 40回 | 25.00% | 0.533 | −1,664.5pips |
勝率63.0%、PF 4.3だった設定が、翌年は勝率25.0%、PF 0.533、−1,664.5pipsまで悪化しました。
そして、これは1つの設定に起きた事故ではありません。
この記事の冒頭の図は、横軸に2024年、縦軸に2025年の損益を置き、84設定を1点ずつ示しています。4時間足では2024年の黒字設定61通りに対し、2025年の黒字設定は17通り、両年とも黒字は3通りでした。
見落としてはいけない数字がもうひとつあります。この27回という取引回数です。 27回なら、1回の勝ち負けで勝率が3.7ポイント動きます。4時間足の84通りの取引回数は年間15〜188回で、多くはこの水準です。勝率63.0%を「そういう性質の設定だ」と読むには足りません。
期間はいくつがいいか
2年とも黒字だった期間を並べます。1時間足のクロス判定は、期間だけが変数になります(水準を使わないため)。12通りの期間を両方の年で並べるとこうです。
| 期間 | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|
| 7 | +638pips | +1,136pips |
| 9 | +360pips | +1,589pips |
| 12 | +47pips | +1,620pips |
| 14 | −325pips | +2,014pips |
| 18 | −1,682pips | +1,781pips |
| 20 | −621pips | +2,066pips |
| 25 | +381pips | +578pips |
| 30 | +220pips | −944pips |
| 40 | +1,042pips | −1,802pips |
| 50 | +37pips | +332pips |
| 60 | −922pips | −215pips |
| 75 | −1,857pips | +1,696pips |
12通りのうち、年をまたいで符号が変わったのは6通り。両方の年で赤字だったのは1通り(期間60)。そして両方の年で黒字だったのは期間7・9・12・25・50の5通りです。
残った5通りは、期間12以下の短い側と、25・50に分かれます。 その中で期間7は、2025年に+637.8pips、2024年に+1,135.9pipsでした。
よく紹介される期間25も両方の年で黒字です。ただし5通りの中での位置は年で入れ替わります。2025年は期間7に次ぐ2番目ですが、2024年は下から2番目でした。
| 年 | トレード回数 | 勝率 | PF | 損益 | 最大ドローダウン |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025 | 228回 | 41.23% | 1.056 | +380.6pips | 1,530.0pips |
| 2024 | 237回 | 36.29% | 1.075 | +578.4pips | 1,440.8pips |
PFは両方の年とも1.06前後、最大ドローダウンは2025年で利益の4.0倍、2024年で2.5倍あります。どちらの年も黒字ではありますが、この曲線に資金を預ける根拠としては薄い数字です。84通りを見渡しても、それ以上のものはほとんど見つかりませんでした。
勝率だけで設定を選べるか
1時間足・2025年で最も勝率が高かったのは期間30・水準90で、勝率49.62%でした。ただし、同じ設定の2024年は勝率36.43%、損益+335.4pipsです。1年の勝率だけでは、翌年の結果は判断できません。
勝率の幅は32.50%〜49.62%でした。
フィルターで改善するか
期間25・クロス判定に足して測りました。
| 条件 | 年 | 取引数 | 勝率 | 損益 |
|---|---|---|---|---|
| アルーンのみ | 2025 | 228回 | 41.23% | +380.6pips |
| アルーンのみ | 2024 | 237回 | 36.29% | +578.4pips |
| ADX 20以上 | 2025 | 108回 | 40.74% | +46.0pips |
| ADX 20以上 | 2024 | 123回 | 33.33% | +38.8pips |
| ADX 25以上 | 2025 | 57回 | 36.84% | −698.7pips |
| ADX 25以上 | 2024 | 66回 | 37.88% | −465.7pips |
| ADX 30以上 | 2025 | 30回 | 40.00% | −246.3pips |
| ADX 30以上 | 2024 | 33回 | 39.39% | +59.5pips |
| 東京時間のみ(UTC 0〜8) | 2025 | 71回 | 47.89% | +696.3pips |
| 東京時間のみ(UTC 0〜8) | 2024 | 75回 | 37.33% | −80.1pips |
| ロンドン・NY時間のみ(UTC 7〜21) | 2025 | 149回 | 36.91% | −1,076.4pips |
| ロンドン・NY時間のみ(UTC 7〜21) | 2024 | 162回 | 37.04% | +849.7pips |
ADXのフィルターは、どの水準でも両方の年で損益を減らしました。 ADX 25以上は両方の年とも赤字に落ちています。トレンドの強さで絞るという発想そのものが、この組み合わせでは機能しませんでした。
時間帯フィルターは前回と同じ挙動です。東京時間は2025年に効き、ロンドン・NY時間は2024年に効きました。符号ごと入れ替わります。
損切りと利確で改善するか
| 決済ルール | 年 | 取引数 | 勝率 | 損益 |
|---|---|---|---|---|
| 反対の判定のみ | 2025 | 228回 | 41.23% | +380.6pips |
| 反対の判定のみ | 2024 | 237回 | 36.29% | +578.4pips |
| 損切り30・利確60 | 2025 | 212回 | 35.38% | +217.9pips |
| 損切り30・利確60 | 2024 | 228回 | 39.47% | +1,084.2pips |
| 損切り50・利確100 | 2025 | 213回 | 40.85% | +1,703.7pips |
| 損切り50・利確100 | 2024 | 223回 | 37.22% | +1,058.6pips |
| 損切り100・利確200 | 2025 | 213回 | 41.78% | +1,716.4pips |
| 損切り100・利確200 | 2024 | 223回 | 38.12% | +1,888.2pips |
| 損切り50・利確50 | 2025 | 212回 | 50.94% | +845.4pips |
| 損切り50・利確50 | 2024 | 230回 | 48.26% | +795.2pips |
| 24本で時間決済 | 2025 | 220回 | 48.18% | +2,100.2pips |
| 24本で時間決済 | 2024 | 240回 | 42.50% | +1,324.0pips |
ここはこの記事で唯一、条件を足して素直に良くなった場所です。5つのうち4つが両方の年で「反対の判定のみ」を上回りました。 特に損切り100/利確200は+1,716.4/+1,888.2pips、24本の時間決済は+2,100.2/+1,324.0pipsです。
裏を返すと、アルーンの「反対の判定を待つ」という決済がそれだけ弱いということでもあります。反対側の判定が出るまで持ち続けると、伸びたぶんを返してしまう。損切り50/利確50は勝率を両方の年で50%前後に乗せています(50.94%/48.26%)。
スプレッドはどれだけ効くか
回数の多い設定ほどスプレッドで決まる、という前回の結論はここでも成り立ちました。
| 時間足 | 期間 | 判定 | 取引回数 | スプレッド | 年間損益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1時間足 | 30 | 水準100 | 121回 | 0.0pips | +2,380.0pips |
| 1時間足 | 30 | 水準100 | 121回 | 0.3pips | +2,343.7pips |
| 1時間足 | 30 | 水準100 | 121回 | 0.6pips | +2,307.4pips |
| 1時間足 | 30 | 水準100 | 121回 | 1.0pips | +2,259.0pips |
| 1時間足 | 30 | 水準100 | 121回 | 1.5pips | +2,198.5pips |
| 1時間足 | 30 | 水準100 | 121回 | 2.0pips | +2,138.0pips |
| 15分足 | 25 | クロス | 1,031回 | 0.0pips | +1,101.1pips |
| 15分足 | 25 | クロス | 1,031回 | 0.3pips | +791.9pips |
| 15分足 | 25 | クロス | 1,031回 | 0.6pips | +482.6pips |
| 15分足 | 25 | クロス | 1,031回 | 1.0pips | +70.2pips |
| 15分足 | 25 | クロス | 1,031回 | 1.5pips | −445.3pips |
| 15分足 | 25 | クロス | 1,031回 | 2.0pips | −960.8pips |
1時間足の121回の設定は0から2.0pipsまで動かしても242pipsしか減りません。15分足の1,031回の設定は2,062pips減り、1.5pipsで赤字に転落します。
15分足がアルーンで唯一「両方の年で黒字が多かった」時間足だったことを思い出してください。その優位は取引回数の多さの上に乗っていて、スプレッドの前提が変わると消えます。同じ関係は他の指標でも成り立ちます(RVI・スーパートレンド)。
アルーンを使うなら、単体で判断させるより、他の条件と組み合わせたときの1要素として置くほうが結果に合っています。決済を「反対の判定待ち」から損切り・利確に替えるだけで両方の年とも改善した点も、そのことを示しています。プログラミングなしで条件を組むなら、アルーンに何を足すと変わるのかを自分の通貨ペアで確かめられます。同じ方法でQQEを200通り検証した記事もあります。指標が違うと結論がどう変わるかの比較になります。
補足
- 通貨ペアは米ドル/円のみ、期間は2024年と2025年の2年だけです
- 4時間足は取引回数が年間15〜188回しかありません。この件数の勝率やPFは、そもそも幅の広い数字です
- アルーンの計算は実装による差が小さい指標ですが、判定ロジック(クロスの定義、水準の等号の扱い)はツールによって違います。この数値はFormiqの実装によるものです
- エントリーも決済も足の終値で行っています
- スプレッドは全期間0.3pips固定です。実際には時間帯と指標発表で変動します
- 時間帯によって値動きの大きさは変わります。時間フィルターの結果はその影響を受けています
よくある質問
- アルーンの一番良い設定は何ですか?
- ドル円・1時間足・2025年で損益が最大だったのは、期間30・水準100です。121回で+2,343.7pipsでしたが、同じ設定の2024年は+42.3pipsでした。1時間足で両年とも黒字だったのは84通り中33通りです。その中では期間7のクロス判定が2025年+637.8pips、2024年+1,135.9pipsでした。
- アルーンはクロスと水準、どちらで見るべきですか?
- この検証では時間足と年で入れ替わりました。1時間足の2025年はクロス判定が12通り中7通り黒字で中央値+42pips、水準判定は72通り中36通りが黒字で中央値−28pipsです。ところが2024年はどちらも大差なく、4時間足の2025年はクロスが12通り中3通りまで落ちます。一方が常に良いという結果にはなりませんでした。
- アルーンの期間はいくつがいいですか?
- 1時間足のクロス判定で12通りの期間を試すと、両方の年で黒字になったのは期間7・9・12・25・50の5通りでした。最も大きかったのは期間7(2025年+637.8pips、2024年+1,135.9pips)です。よく使われる期間25も両方の年で黒字ですが、額は小さくなります(+380.6/+578.4pips)。12通り中6通りは年をまたぐと符号が変わりました。
- アルーンだけで勝てますか?
- 1時間足・2025年の84通りで黒字は43通り、中央値は+6pipsでした。ほぼコイン投げです。4時間足では84通り中17通りしか黒字にならず、両方の年で黒字だったのは3通りだけです。同じ条件で試した別の指標(QQE)が1時間足で200通り中194通り黒字だったのと比べると、アルーン単体の結果はかなり弱いものでした。
- アルーンはMT4に標準で入っていますか?
- MT4には標準では入っておらず、配布されている .ex4/.mq4 を MQL4/Indicators に置いて再起動します。MT5には標準で入っています。TradingViewはインジケーター検索から「Aroon」を追加できます。Formiqのチャートにも入っていて、期間を変更できます。
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