移動平均線乖離率の逆張り:4,320通りの設定比較
移動平均線乖離率をドル円4,320通りでバックテストしました。教科書の±5%は期間25では2年間一度も届きません。乖離がゼロに戻るのは18区分中13区分で価格ではなく平均が追いついたためで、ゼロクロスは移動平均線クロスそのものでした。
移動平均線乖離率は、終値が移動平均線からどれだけ離れているかを、移動平均に対する割合で表したものです。式は1行しかありません。
乖離率 =(終値 − 移動平均)÷ 移動平均 × 100
紹介のされ方はほぼ決まっています。期間25の移動平均に対して±5%まで離れたら行き過ぎで、そこから平均に戻ってくる。日本語で書かれた解説のほとんどがこの数字を挙げます。
そこから測りました。ドル円の2024年と2025年、15分足・1時間足・4時間足のどれでも、期間25の乖離率が±5%に届いた足は1本もありません。
移動平均線乖離率は何を測っているのか
分子は「価格が平均からどれだけ離れたか」、分母は「そのときの価格の水準」です。単位は%で、ゼロは価格が移動平均線の上に乗っている状態を指します。
ここが他のオシレーターと違う点です。RSIやストキャスティクスは0から100の枠に押し込まれていて、どの通貨ペアでも70や30という数字が同じ意味を持ちます。乖離率は押し込まれていません。そのときの価格に対する割合なので、届く範囲は市場と時間足によって変わります。
期間25の単純移動平均で実測すると、こうなります。
| 時間足 | 中央値 | 9割の足が入る範囲 | 2024年の最大 | 2025年の最大 |
|---|---|---|---|---|
| 15分足 | 0.09% | 0.27% | 1.94% | 1.94% |
| 1時間足 | 0.19% | 0.56% | 2.78% | 1.67% |
| 4時間足 | 0.41% | 1.05% | 4.54% | 2.35% |
中央値と9割の範囲は2025年の値です。同じ「±5%」という水準が、4時間足では2年に1度も届かない極端値で、15分足では最大値の2.6倍あります。
±5%はどこから来たのか
株式市場です。25日移動平均に対する乖離率が±5%を超えたら過熱、という使われ方が日本の株式で定着していて、それがそのまま為替の解説に移っています。日足の株価と15分足の通貨ペアでは、平均から離れる幅が2桁違います。
期間を伸ばせば届きます。2年間で±5%を超えた足があったのは3通りだけでした。
| 時間足 | 期間 | 年 | ±5%を超えた足 | その年の最大 |
|---|---|---|---|---|
| 4時間足 | 200 | 2024年 | 4.02% | 9.60% |
| 4時間足 | 75 | 2024年 | 0.39% | 7.08% |
| 1時間足 | 200 | 2024年 | 0.22% | 6.25% |
どれも2024年です。2024年のドル円は年間で1,632pips上昇し、値幅は2,237pipsありました。2025年は年間で56pips下落し、値幅は1,900pipsです。この2年間で±5%を超えたのは、2024年の期間75以上だけでした。
%という単位は安定しているか
安定しません。同じ1%が、価格水準によって別の距離になります。「価格に対する割合」が実務上何を表すのか、2つの角度から測りました。
1%が何pipsかは、年の中で16%変わる
2024年のドル円は139.723円から161.940円まで動いています。1%という同じ乖離幅が、年の安いところでは139.7pips、高いところでは161.9pipsです。 同じ水準を打ち込んでいるつもりで、実際には別の距離を待っていることになります。
2025年は139.923円から158.663円で、1%は139.9pipsから158.7pipsでした。
同じ水準が、四半期によって2倍から3.6倍の頻度で成立する
pipsの話より効くのはこちらです。%で測った水準と、同じ乖離をATR倍(その期間の平均的な値幅の何倍か)で測った水準を並べて、どちらも「その年の2割の足で成立する」ように合わせてから、四半期ごとの成立率を比べました。
| 時間足 | 年 | %:最も静かな四半期→最も忙しい四半期 | ATR倍:最も静かな四半期→最も忙しい四半期 |
|---|---|---|---|
| 15分足 | 2024年 | 11.4% → 32.4%(2.83倍) | 18.0% → 21.9%(1.22倍) |
| 15分足 | 2025年 | 12.5% → 28.6%(2.30倍) | 18.0% → 21.8%(1.22倍) |
| 1時間足 | 2024年 | 12.3% → 32.8%(2.66倍) | 17.2% → 21.6%(1.26倍) |
| 1時間足 | 2025年 | 12.8% → 31.3%(2.44倍) | 16.2% → 22.6%(1.40倍) |
| 4時間足 | 2024年 | 9.7% → 34.5%(3.56倍) | 18.5% → 20.9%(1.13倍) |
| 4時間足 | 2025年 | 14.9% → 30.5%(2.05倍) | 16.3% → 22.7%(1.39倍) |
6区分すべてで、%のほうが振れました。 %で打ち込んだ水準は、静かな四半期にはほとんど成立せず、荒れた四半期には3倍の頻度で成立します。ATR倍で打ち込んだ水準は16〜23%の間に収まりました。
ただし、成績は%のほうが良かった
ここで話が折り返します。単位として素直なのはATR倍のはずなので、成績もそちらが上だと予想して測りました。結果は逆です。
同じ読み方・同じ期間・同じ時間足・同じ年で、それぞれの単位に自分にいちばん都合のいい水準を選ばせて比べた90区分のうち、ATR倍が勝ったのは26区分でした。中央値どうしの比較でも33区分です。
理由は取引回数です。ATR倍は静かな相場でも同じ頻度で成立するので、そのぶん売買が増えます。15分足の買いの逆張りでは、取引回数の中央値が%で年29回、ATR倍で161回でした。この記事の最後にあるとおりコストは取引回数×スプレッドなので、成立を安定させることは、成立を増やすことでもあります。
安定した単位が儲かる単位とは限りませんでした。
ゼロに戻るのは価格が戻るからか
戻しているのは価格ではなく、追いついてくる移動平均のほうでした。「乖離率は必ずゼロに戻る」という説明は、実測でも正しいです。問題はその戻り方です。
水準を超えた足から、乖離率が符号を変えるまでを1回の往復として、その往復を「価格が動いた分」と「移動平均が追いついた分」に分けました。 2つの寄与を足すと100%になります。
| 時間足 | 年 | 価格の寄与 | 平均の寄与 | 往復の本数 |
|---|---|---|---|---|
| 15分足 | 2024年 | −1.6% | 101.6% | 20.2本 |
| 15分足 | 2025年 | −0.7% | 100.7% | 19.5本 |
| 1時間足 | 2024年 | −26.8% | 126.8% | 20.1本 |
| 1時間足 | 2025年 | −4.0% | 104.0% | 16.7本 |
| 4時間足 | 2024年 | −24.1% | 124.1% | 20.6本 |
| 4時間足 | 2025年 | +9.2% | 90.8% | 17.3本 |
期間25、水準0.25%(4時間足は0.5%)での値です。期間10と75も含めた18区分では、価格の寄与がマイナスだったのは13区分でした。平均の寄与は61.6%から139.6%の範囲です。
読み方はこうです。価格が動かなくても、移動平均のほうが価格に近づいていくので、乖離率はゼロに戻ります。 「行き過ぎたら戻る」の「戻る」は、多くの場合は価格の話ではありません。
回数で見ると印象が変わります。価格が入った方向に戻したのは、18区分で52.0%から78.1%の往復でした。半分以上の往復では価格も戻っています。それでも平均するとマイナスなのは、戻らなかった往復のほうが大きく動いているからです。 勝率が高くて損益がマイナスになる形が、値動きの側にそのまま出ています。
順番を壊しても同じことが起きる
1本ごとの終値の変化はそのままに、並び順だけをランダムに入れ替えた系列(値幅も年間の上昇幅もテールも本物のまま)で、同じ測定をしました。2025年、期間25です。
| 時間足 | 9割の範囲(実データ/並べ替え) | 0.25%超えの割合 | ゼロに戻るまでの本数 |
|---|---|---|---|
| 15分足 | 0.269% / 0.258% | 11.9% / 10.9% | 19.5本 / 20.7本 |
| 1時間足 | 0.558% / 0.521% | 39.6% / 39.5% | 16.7本 / 17.1本 |
| 4時間足 | 1.051% / 0.998% | 69.5% / 67.3% | 15.2本 / 12.7本 |
ほとんど同じです。 乖離率が広がってゼロに戻る往復は、相場の性質ではなく、終値から終値の移動平均を引くという計算の性質でした。
違いが出たのは端のほうだけです。99%点は実データが0.563%・1.129%・1.997%、並べ替えが0.462%・0.899%・1.573%で、大きく離れる場面だけは本物の相場のほうが多くあります。 往復は計算のもので、極端値は相場のものです。
ゼロラインクロスは何なのか
移動平均線クロスそのものです。乖離率の分母は価格で、価格は負になりません。ということは、乖離率の符号は(終値 − 移動平均)の符号と一致します。
実測でも、時間足3種×期間5種の15通りで不一致は0件でした。%で測ってもATR倍で測っても符号は同じで、こちらも15通りで不一致0件です。
バックテストでも確かめました。乖離率のゼロクロスと、終値(=期間1の単純移動平均)と期間Nの移動平均のクロスを、それぞれ1つの手法として回します。
| 期間 | 両手法の取引回数 | 両手法の年間損益 |
|---|---|---|
| 5 | 1,688回 | +1,323.4pips |
| 10 | 1,053回 | +2,007.6pips |
| 25 | 600回 | +2,227.8pips |
| 75 | 335回 | +787.0pips |
| 200 | 268回 | −1,966.8pips |
1時間足・2025年。平均の種類を単純移動平均から指数移動平均・加重移動平均・平滑移動平均・ハル移動平均に変えても、5種すべてで取引数もpipsも一致しました。
乖離率のゼロラインを見ることは、移動平均線クロスを見ることです。 別の指標を足したことにはなりません。
なお単位の違いがゼロクロスの結果を変えた区分は、60区分のうち1つだけありました。4時間足・2024年・期間200です。ATR倍のほうはATRが落ち着くまでのウォームアップを2倍取るので、線の始まりが遅れて最初の数回の売買がずれます。符号が変わったわけではありません。
チャートに表示する方法
事実として並記します。
- MT4/MT5:乖離率という名前の標準インジケーターはありません。標準で入っているのはエンベロープ(挿入→インディケータ→トレンド→Envelopes)で、これは移動平均の±d%に線を引いたものです。つまり同じ計算を、別枠のオシレーターではなく価格チャート上の2本の線として描いています。乖離率そのものを別枠に出したい場合は、配布されている .mq4 / .mq5 ファイルを探してインストールします。
- TradingView:インジケーター検索で「Disparity Index」と入れると公開スクリプトが見つかります。標準搭載のリストにはありません。
- Formiq(ブラウザ):インジケーター一覧の「移動平均線乖離率」から追加します。期間・水準線・測る単位(%/ATR倍)を設定できます。バックテスト側でも条件として使えて、読み方は4種(水準・水準の行き過ぎ・±水準の抜け・ゼロラインクロス)です。
エンベロープとの違いは、ヒゲか終値か
エンベロープの下限は 移動平均 ×(1 − d/100) なので、下限にタッチすることと、乖離率が −d% を下回ることは同じ条件です。 違うのは判定に使う価格だけで、エンベロープは足の安値と高値を見て、乖離率は終値を見ます。
下限で入って上限で決済する形に揃えて、期間25で並べました。
| 判定 | 年 | 時間足 | 水準 | 売買方向 | 取引回数 | 年間損益 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| エンベロープ(ヒゲ) | 2025年 | 1時間足 | 0.5% | 買い | 40回 | +26.8pips |
| 乖離率(終値) | 2025年 | 1時間足 | 0.5% | 買い | 31回 | +769.9pips |
| エンベロープ(ヒゲ) | 2024年 | 1時間足 | 0.5% | 買い | 46回 | +873.0pips |
| 乖離率(終値) | 2024年 | 1時間足 | 0.5% | 買い | 29回 | +169.5pips |
時間足3種×2年×水準3種×売買2方向の36区分で、終値判定の取引回数がヒゲ判定を上回った区分は0でした(36区分すべてで同じか少ない)。 一方で損益が上回ったのは36区分中20です。終値で判定すると売買は確実に減りますが、減った先が良いとは限りませんでした。
検証の条件
読者が同じ数字を出せる粒度で書きます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 通貨ペア | 米ドル/円 |
| 時間足 | 15分足・1時間足・4時間足 |
| 期間 | 5・10・25・75・200 |
| 水準(%) | 0.15・0.3・0.5・0.8・1.2 |
| 水準(ATR倍) | 1.0・1.5・2.0・2.5・3.0 |
| 決済水準(%) | 0(平均に戻る)・0.15・0.3 |
| 決済水準(ATR倍) | 0・0.75・1.5 |
| 平均の種類 | 単純・指数・加重・平滑・ハル |
| 検証期間 | 2024年/2025年/2025年前半/2025年後半 |
| スプレッド | 0.3pips |
| ロット | 0.1 |
| 約定 | 終値 |
| 損切り・利確 | 無し(別途セクションで測定) |
| 組み合わせ数 | 4,320(平均の種類は別枠で360) |
読み方は3つに分けました。
- 逆張り:水準を超えたら反対側に入り、平均に戻ったら決済する。買いと売りのどちらか一方しか作らないので、買い側と売り側を別の手法として回しています
- 順張り:+水準を上抜けたら買い、−水準を下抜けたら売り。対称なのでエントリーと決済に同じ条件を入れます
- ゼロラインクロス:ゼロを上抜けたら買い、下抜けたら売り
3つの読み方はどう違うか
逆張りは勝率65%前後で黒字が多く、ゼロクロスは勝率24%で1時間足だけが残ります。2025年、%で測った場合です。
| 読み方 | 時間足 | 黒字 | 中央値 | 平均勝率 | 中央の取引回数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 逆張り・買い | 15分足 | 35/75 | +0.0pips | 65.2% | 29回 |
| 逆張り・買い | 1時間足 | 42/75 | +110.5pips | 〃 | 30回 |
| 逆張り・買い | 4時間足 | 60/75 | +466.2pips | 〃 | 20回 |
| 逆張り・売り | 15分足 | 31/75 | −76.5pips | 66.4% | 23回 |
| 逆張り・売り | 1時間足 | 53/75 | +201.4pips | 〃 | 27回 |
| 逆張り・売り | 4時間足 | 63/75 | +718.9pips | 〃 | 21回 |
| 順張り | 15分足 | 15/25 | +300.0pips | 36.7% | 37回 |
| 順張り | 1時間足 | 9/25 | −749.4pips | 〃 | 42回 |
| 順張り | 4時間足 | 8/25 | −851.6pips | 〃 | 30回 |
| ゼロクロス | 15分足 | 2/5 | −641.6pips | 23.8% | 2,704回 |
| ゼロクロス | 1時間足 | 4/5 | +1,323.4pips | 〃 | 600回 |
| ゼロクロス | 4時間足 | 1/5 | −918.6pips | 〃 | 149回 |
平均勝率は時間足をまたいだ全体の値です。逆張りは勝率65%前後で黒字が多く、ゼロクロスは勝率24%で1時間足だけが残ります。 シリーズ12本目までで見えていた「逆張りは勝率が高くて負ける」という形が、2025年の逆張りには当てはまりません。
当てはまらない理由は、次の2つの節にあります。
去年勝てた設定は今年も勝てるか
ほとんど残りませんでした。2025年の年間損益が最も大きかった設定を、同じ条件のまま2024年に当て直します。
| 読み方 | 時間足 | 期間 | エントリー水準 | 決済水準 | 2025年の取引回数 | 2025年の年間損益 | 2024年の年間損益 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 逆張り・買い | 15分足 | 200 | 0.8% | 0.15% | 34回 | +1,368.6pips | +118.9pips |
| 逆張り・買い | 1時間足 | 200 | 0.5% | 0% | 32回 | +1,327.8pips | −511.2pips |
| 逆張り・買い | 4時間足 | 75 | 0.5% | 0.3% | 18回 | +1,373.6pips | −394.8pips |
| 逆張り・売り | 4時間足 | 25 | 0.8% | 0.3% | 21回 | +1,419.2pips | −1,840.1pips |
4設定のうち、2024年も黒字だったのは15分足の買いだけです。逆方向でも、2024年に+2,155.5pipsだった15分足・逆張り買い・期間5・0.15%→0.3%は、2025年には+255.6pipsまで減りました。2025年の同じ75設定の中央値は0.0pipsです。
勝率65%の逆張りは本物か
2024年の4時間足では、相場の流れを引くと72通りのうち1つも上乗せが残りませんでした。逆張りは買いと売りのどちらか一方しか作りません。上昇した年に買いを持てば、何をきっかけに買っても上昇分は取れます。 そこで1取引あたりの損益から、「同じ本数だけ無条件に持っていたら得られた分」(年間の値幅 ÷ 足数 × 平均保有本数)を引きました。
| 時間足 | 年 | 売買方向 | 1取引の損益 | 相場の流れ | 指標の上乗せ | 上乗せがプラスの設定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 4時間足 | 2025年 | 買い | +29.20pips | −1.24pips | +30.44pips | 60/69 |
| 4時間足 | 2025年 | 売り | +40.61pips | +1.40pips | +39.21pips | 60/70 |
| 4時間足 | 2024年 | 買い | −22.54pips | +46.07pips | −68.61pips | 0/72 |
| 1時間足 | 2024年 | 買い | −10.91pips | +21.22pips | −32.13pips | 5/72 |
| 1時間足 | 2025年 | 買い | +10.70pips | −0.74pips | +11.44pips | 42/63 |
2024年の4時間足では、72通りのうち1つも上乗せがプラスになりませんでした。 ATR倍で測った場合も57通り中0通りです。
2025年はドル円が年間56pips下落しただけの横ばいの年で、そこでは逆張りの上乗せがはっきり残ります。2024年は1,632pips上昇した年で、そこでは全滅します。「乖離率の逆張りは効く」と書けるかどうかは、どちらの年を見たかで決まっていました。
売り側は逆の非対称を持ちます。2024年の4時間足の売りは1取引−74.08pipsですが、そのうち−76.04pipsが相場の流れで、上乗せは+1.96pipsです。上昇した年に売り続けた損は、指標のせいではありません。
どの平均から測るか
乖離率は「移動平均からの乖離」なので、移動平均線の種類も設定結果を変えるパラメータです。期間とその他の条件を固定し、5種類の移動平均線を比べました。
2025年・期間25について、単純移動平均とゼロの上下が食い違う足の割合を比べました。
| 平均の種類 | 15分足 | 1時間足 | 4時間足 |
|---|---|---|---|
| 指数移動平均 | 7.0% | 6.5% | 5.3% |
| 加重移動平均 | 8.2% | 8.0% | 8.3% |
| 平滑移動平均 | 15.8% | 15.6% | 12.0% |
| ハル移動平均 | 36.8% | 37.1% | 37.9% |
ハル移動平均は、4割近い足で単純移動平均と反対側を指します。 平均の種類は表示の好みではなく、別の条件です。
成績では、読み方4種×時間足3種×2年×期間3種の72区分ごとに、年間損益が最も大きい平均を確認しました。該当した区分数はハル24・平滑14・加重13・単純11・指数10です。どの平均も10区分以上で最大となり、単純移動平均だけが一貫して優位という結果ではありませんでした。
フィルターと損切りとコスト
コストは取引回数×スプレッド
シリーズを通して例外が出ていない関係です。ここでも、表示している桁(0.1pips)まで一致しました。
| 手法 | 期間 | 水準 | 時間足 | 年 | 取引回数 | スプレッド0の年間損益 | スプレッド0.3の年間損益 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ゼロクロス | 25 | 0 | 15分足 | 2025年 | 2,704回 | +169.6pips | −641.6pips | 811.2pips |
| ゼロクロス | 25 | 0 | 1時間足 | 2025年 | 600回 | +2,407.7pips | +2,227.8pips | 179.9pips |
| 順張り | 25 | ±0.5% | 1時間足 | 2025年 | 62回 | −1,662.1pips | −1,680.6pips | 18.5pips |
15分足のゼロクロスは、スプレッド0なら+169.6pipsです。 損益分岐スプレッドは0.063pipsで、実質的に「コストで負けている」手法でした。1時間足の同じ設定は損益分岐が4.013pipsあります。
フィルターと損切り
1時間足・期間25のゼロクロスで測りました。
| 条件 | 年 | 取引回数 | 年間損益 |
|---|---|---|---|
| そのまま | 2025年 | 600回 | +2,227.8pips |
| そのまま | 2024年 | 601回 | +2,546.5pips |
| ADX 25以上 | 2025年 | 176回 | +554.8pips |
| ADX 25以上 | 2024年 | 161回 | +24.9pips |
| ロンドン+NY時間 | 2025年 | 328回 | +1,793.1pips |
| ロンドン+NY時間 | 2024年 | 353回 | +892.6pips |
| 東京時間 | 2025年 | 247回 | +564.3pips |
| 東京時間 | 2024年 | 210回 | +2,427.2pips |
| 損切り40pips | 2025年 | 558回 | +2,461.7pips |
| 損切り40pips | 2024年 | 559回 | +3,612.6pips |
| 利確40pips | 2025年 | 599回 | +2,403.1pips |
| 利確40pips | 2024年 | 598回 | +1,223.9pips |
ADXも時間帯フィルターも、2年ともに改善した組み合わせはありません。 ADXはどちらの年も成績を下げました。時間帯は2025年ならロンドン+NY、2024年なら東京で、逆を向いています。
損切り40pipsだけが2年とも改善しました。 15分足のゼロクロスでも、損切り20pipsで−641.6pipsが−108.6pipsまで戻ります(黒字にはなりません)。ゼロクロスは勝率24%・平均利益が平均損失の3倍以上という形なので、損切りを置いても勝ちトレードがほとんど切れません。
補足
- 通貨ペアは米ドル/円1つだけです。 乖離率の単位は価格に対する割合なので、価格水準の違う通貨ペアでは水準がそのまま移りません。上に書いた0.27%・0.56%・1.05%という数字は、ドル円のこの2年間の数字です
- 順番を壊した対照群は終値だけの系列です。 足の中の高値と安値は捨てているので、ヒゲを読むルールには使えません。この記事でエンベロープと比べた部分には適用していません
- 約定は終値で、スリッページを0としています。 15分足で年2,700回売買する設定では、実際の執行はこの数字より悪くなります
関連する検証
- ボリンジャーバンドの設定:同じ「バンドに触れたら逆張り/抜けたら順張り」の形を、標準偏差で測った場合
- 移動平均線クロスの設定:この記事のゼロラインクロスと同じもの
- CCIの設定:平均からの乖離を、乖離の平均で割って目盛りにした場合
- サイコロジカルラインの設定:相場の流れを引き算する測り方を最初に使った記事
よくある質問
- 移動平均線乖離率の±5%はドル円で使えますか?
- 期間25では使えませんでした。ドル円の2024年と2025年、15分足・1時間足・4時間足のどれでも、期間25の乖離率が±5%に届いた足は1本もありません。2年間の最大値は15分足で1.94%、1時間足で2.78%、4時間足で4.54%でした。±5%が届いたのは期間75以上を4時間足と1時間足に載せた2024年だけで、その年でも4時間足の期間200が全体の4.02%、1時間足の期間200が0.22%です。±5%は株式市場で測られた数字で、通貨ペアの短い時間足には移りません。
- 移動平均線乖離率はいくつに設定すればよいですか?
- 期間25の乖離率が9割の足で収まる範囲は、15分足で0.27%、1時間足で0.56%、4時間足で1.05%でした。この記事の逆張りでは0.3%から0.5%で年間損益が大きくなる設定がありましたが、2025年に選んだ4設定のうち3設定は2024年に赤字でした。ゼロラインクロスでは、1時間足の期間10と25が両年で黒字でした。
- 乖離率がゼロに戻るのは価格が戻るからですか?
- 多くの場合は違いました。水準を超えてからゼロに戻るまでの動きを、価格が動いた分と平均が追いついた分に分けて測ると、価格の寄与は18区分中13区分でマイナスです。つまり価格は乖離を広げる方向に動き続け、それでも移動平均が価格に追いつくことで乖離率はゼロに戻っています。平均の寄与は61.6%から139.6%の範囲でした。
- 移動平均線乖離率のゼロラインクロスは何ですか?
- 終値が移動平均線を上抜けることそのものです。乖離率の分母は価格なので符号は(終値−移動平均)の符号と一致し、時間足3種×期間5種の15通りで不一致は0件でした。バックテストでも、期間5から200まで、平均の種類5種すべてで、乖離率のゼロクロスと終値/移動平均のクロスは取引数もpipsも完全に一致します。乖離率のゼロクロスは、移動平均線クロスを別の目盛りで見たものです。
- 移動平均線乖離率はMT4に入っていますか?
- MT4とMT5に乖離率という名前の標準インジケーターはありません。標準で入っているのはエンベロープ(挿入→インディケータ→トレンド→Envelopes)で、これは同じ計算をチャート上の2本の線として描いたものです。乖離率そのものを別枠に出したい場合は配布ファイルを探してインストールします。TradingViewはインジケーター検索でDisparity Indexという名前のスクリプトが見つかります。Formiqのチャートには標準で入っていて、バックテスト側でも読み方4種を条件にできます。
Formiqは、リプレイ練習とノーコードバックテストをブラウザだけで使える無料のFXツールです。 チャートを開く、または無料プランでできることをご覧ください。