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フェアバリューギャップ「埋まる」は本当?2年分の足で検証した結果

フェアバリューギャップはドル円の足の2割強で生まれ、96〜99%が埋まります。ただしギャップを作らなかった足の高安も同じ割合で戻られていました。埋まるまでの中央値は2本、4割強は次の1本です。実測の記録。

フェアバリューギャップ(Fair Value Gap、FVG)は、ローソク足3本で判定するパターンです。1本目の高値と3本目の安値が重ならなければ、その間の値幅は「真ん中の足が一気に通り抜けて、売り買いが釣り合わないまま残った領域」だと読みます。価格はそこに戻ってくる、というのが公開されている説明です。

戻ってきます。ドル円で数えると96.2〜99.4%が戻られていました。

問題は、その数字がフェアバリューギャップについて何も言っていないことです。強気ギャップの天井は3本目の足の安値そのものなので、「ギャップが埋まった」は「その足の安値に価格が戻った」と一字一句同じ出来事です。そして安値は、どのローソク足にもあります。

96%97%98%99%100%M15 2025M15 2024H1 2025H1 2024H4 2025H4 2024価格が戻ってきた割合
ギャップを作った足それ以外の足ドル円・その足の安値(強気)または高値(弱気)に価格が戻った割合
6つの区分すべてで、ギャップを作った足のほうが普通の足よりわずかに戻られにくい、という結果です。

フェアバリューギャップとは

判定は3本の足の比較1回だけです。

  • 強気:3本目の安値 > 1本目の高値。帯はその2つの価格のあいだ
  • 弱気:3本目の高値 < 1本目の安値。帯はその2つのあいだ

真ん中の足は出てきません。式に入っていないので、そこが大陽線でも十字線でも判定は変わりません。

ドル円で、この条件が成立する頻度を数えました。

時間足足の本数ギャップ足に対する割合帯の幅(中央値)
15分足202524,9035,61022.53%2.95pips
15分足202424,9995,45521.82%2.70pips
1時間足20256,2261,31221.07%6.85pips
1時間足20246,2501,27120.34%5.80pips
4時間足20251,61036822.86%15.75pips
4時間足20241,61636922.83%13.50pips

5本に1本の足がギャップを開けています。 珍しい形ではありません。15分足では幅が0.1pipsに満たないものが年82〜89件あって、これはチャートに描いても帯にならず点線1本に見えます。

本当に埋まるのか

99%が埋まります。ただしギャップを作らなかった足も、同じだけ埋まりました。ギャップが埋まった割合と、ギャップを作らなかった足の安値・高値に価格が戻った割合を並べます。後者は「1本目と3本目が重なっていた足」、つまりフェアバリューギャップではない足です。

時間足ギャップの足それ以外の足
15分足202599.36%99.37%
15分足202499.19%99.39%
1時間足202598.55%98.71%
1時間足202498.27%98.82%
4時間足202597.01%97.18%
4時間足202496.21%97.79%

冒頭の図がこの表です。6区分すべてで、ギャップの足のほうがわずかに低い。 戻られるまでの本数の中央値も、両方とも2本で一致しました。

「フェアバリューギャップは埋まる」は正しい観測ですが、埋まるのはギャップだからではありません。レンジのある相場では、どの足の高安もいずれ通過されます。この指標は、その一般的な性質に名前を付けたものです。

埋まるまで何本かかるのか

中央値は2本です。待ち時間を数えると、さらに使いにくくなります。

時間足中央値次の1本で3本以内上位10%の待ち
15分足20252本44.03%63.31%44本
15分足20242本46.07%64.02%41本
1時間足20252本45.32%62.57%43本
1時間足20242本43.55%62.37%40本
4時間足20252本45.10%63.59%29本
4時間足20242本41.97%63.10%54本

4割強が、ギャップの成立した次の1本で埋まっています。 3本目の足が終わった瞬間にチャートへ帯が現れて、次の足で消える、という動きが最頻です。

「未約定のギャップに価格が戻ったら入る」という手順は、この分布の上では成立しません。帯を認識してから注文を置くまでのあいだに、半分近くが終わっています。

埋まらずに残るものもあります。2025年の1年間を通して最後まで開いていたのは、15分足で36件(5,610件中)、1時間足で19件(1,312件中)、4時間足で11件(368件中)でした。

帯の内側で止まるのか

止まりません。最初の1本で半分が閉じ切ります。帯には幅があります。「天井に触れる」と「底まで埋める」は別の出来事のはずです。最初に触れた1本が、帯のどこまで入ったかを測りました。帯の幅を1として、0が天井、1が反対側です。

時間足触れた回数到達した深さ(中央値)半分まで完全に埋めた帯の1.5倍まで抜けた
15分足5,5741.1270.58%53.07%42.07%
1時間足1,2931.0666.82%51.35%40.84%
4時間足3570.9766.11%49.30%39.78%

中央値がほぼ1.0です。 触れた足がそのまま帯を通り抜けるのが真ん中の挙動で、約半分は1本で完全に埋め切ります。4割は帯を半分ぶん行き過ぎます。

帯の内側に価格が入って止まる、という描像は出てきませんでした。

チャートに表示する方法

標準では入っていないので、どのツールでも一手間かかります。

  • MT4 / MT5:同梱のインジケーター一覧にフェアバリューギャップはありません。カスタムインジケーター(.mq4 / .mq5)を MQL4/Indicators などに置いてから、ナビゲーターで追加します
  • TradingView:標準のインジケーター一覧には無く、公開スクリプトから探して追加します
  • Formiq:チャートのインジケーター設定にパターンの分類で入っています。埋まっていないギャップだけを表示する切り替えと、最小の幅(pips)の指定ができます

表示結果を変えるのは、「埋まっていないギャップだけを表示する」切り替えと、表示するギャップの最小幅です。ギャップは足の2割で生まれて99%が埋まるので、すべて表示すると過去の帯でチャートが埋まります。

真ん中の足が大きいほうが効くか

判定式は真ん中の足を読んでいません。公開されている説明では、真ん中の足は「displacement(勢いのある足)」と呼ばれ、大きいほど良いとされます。判定式はそこを読みません。読まないことが損なのかを測りました。

真ん中の足の実体をATR比で4等分して、価格が水準に戻ったあと10本でギャップの向きに動いていた割合を出します。

時間足Q1(最小)Q2Q3Q4(最大)
15分足49.68%47.02%51.76%49.32%
1時間足53.11%53.73%47.52%41.93%
4時間足44.32%47.19%49.44%52.81%

実体が大きいほど良い、にはなりませんでした。15分足はQ3が最大、1時間足はQ2が最大で大きいほど下がり、4時間足はQ4が最大です。時間足ごとに向きが違います。

もう一段踏み込んで、判定の境目そのものを見ます。1本目と3本目の重なりをATR比の符号付きで測り、マイナス(重なっている=ギャップではない)も含めて区切りました。

40%45%50%55%ここからギャップ≤−1.0−1.0…−0.5−0.5…−0.2−0.2…00…0.20.2…0.50.5…1.0>1.01本目と3本目の重なり(ATR比・マイナスは重なっている)
M15H1H4ドル円2025年・価格が水準に戻ってから10本後、ギャップの向きに動いていた割合
縦線がインジケーターの言う「ギャップの始まり」です。線はそこで何も起きていません。

ゼロの左右で何も起きていません。区分ごとの数字は41.46〜55.87%(3時間足×8区分の24通り)に散らばりますが、ゼロをまたぐ段差は15分足が−1.81ポイント、1時間足が+2.81ポイント、4時間足が−4.35ポイントで、符号が揃いません

インジケーターが引いている線は、連続した量の途中に置かれた線でした。

検証の条件

価格上の性質を確認した同じギャップを、売買条件として測ります。

項目
通貨ペアドル円
時間足15分足 / 1時間足 / 4時間足
期間2025年(本命)、2024年(検定用)、2025年の前半と後半
スプレッド0.3pips
ロット0.1
決済反対シグナル(損切り・利確は別途)
読み方戻りを取る / 発生に乗る
ギャップの最小幅ATRの0倍・0.25倍・0.5倍・1倍・1.5倍・2倍
有効期間5・10・20・50・100本(戻りを取る側のみ)

読み方は2つに分けました。

  • 戻りを取る:まだ埋まっていない帯に価格が戻ったら、帯の向きに入る(強気ギャップ=買い)。教科書どおりの読み方です
  • 発生に乗る:ギャップが生まれた足で、その向きに入る。同じ形を勢いとして読みます

最小幅をpipsではなくATR倍にしたのは、中央値が15分足の2.95pipsから4時間足の15.75pipsまで動くからです。1つのpips値では3つの時間足をまたげません。

どの時間足で使えたか

1時間足の「戻りを取る」は、両方の年で黒字だった設定が1つもありませんでした。2025年に黒字だった設定の数です。

読み方時間足黒字設定両年とも黒字2025年の中央値
戻りを取る15分足202513/306/30−361.7pips
戻りを取る15分足202420/306/30対象外
戻りを取る1時間足20256/300/30−1,817.6pips
戻りを取る1時間足202420/300/30対象外
戻りを取る4時間足20255/305/30−1,842.8pips
戻りを取る4時間足202422/305/30対象外
発生に乗る15分足20252/61/6−513.5pips
発生に乗る15分足20243/61/6対象外
発生に乗る1時間足20253/63/6−79.7pips
発生に乗る1時間足20246/63/6対象外
発生に乗る4時間足20251/61/6−1,584.7pips
発生に乗る4時間足20246/61/6対象外

1時間足の「戻りを取る」は、30通りのうち両方の年で黒字だったものが1つもありません。

2024年は6区分すべてで半分かそれ以上が黒字(20/30・20/30・22/30・3/6・6/6・6/6)でしたが、2025年は最大でも13/30です。この2年だけでは、どちらの状態が続きやすいかは判断できません。

条件エディタが開いたときの設定(最小幅ATR0.25倍・有効期間50本)の成績を出します。

読み方時間足取引勝率PF損益
戻りを取る15分足20251,33447.08%1.078+1,251.5pips
戻りを取る15分足20241,27848.51%1.075+1,235.2pips
戻りを取る1時間足202532141.43%0.689−3,023.1pips
戻りを取る4時間足20259643.75%0.636−2,107.5pips
発生に乗る15分足20251,21137.90%1.052+840.7pips
発生に乗る4時間足20247341.10%1.751+2,852.4pips

15分足だけが2年ともプラスです。取引回数も1,200を超えていて、少ない回数で作られた数字ではありません。

最小幅の効き方は15分足で最もはっきりしています。

最小幅平均損益平均取引数黒字だった設定
0倍(無効)+381.5pips2,3143/5
ATR 0.25倍+1,382.9pips1,2295/5
ATR 0.5倍+2,228.5pips6055/5
ATR 1倍−606.9pips1330/5
ATR 1.5倍−1,302.1pips490/5
ATR 2倍−949.1pips290/5

15分足・2025年・「戻りを取る」の数字です。細いギャップを捨てるところまでは効いて、捨てすぎると残りません。

去年よかった設定は今年どうなるか

6通りすべて翌年に負けました。このシリーズで毎回やる検定です。片方の年でいちばん良かった設定を、そのまま相手の年に当てます。

読み方時間足最小幅有効期間2024年の損益2025年の損益
戻りを取る15分足ATR 1倍100本+3,713.3pips−1,172.2pips
戻りを取る1時間足ATR 1倍100本+3,968.4pips−2,744.2pips
戻りを取る4時間足ATR 1.5倍20本+2,946.3pips−1,765.1pips
発生に乗る15分足ATR 1倍対象外+2,445.9pips−136.7pips
発生に乗る1時間足ATR 1倍対象外+4,186.1pips−1,017.3pips
発生に乗る4時間足ATR 0.25倍対象外+2,852.4pips−1,694.4pips

6通りすべてが赤字になりました。 1時間足の「戻りを取る」は2024年の+3,968.4pipsから2025年の−2,744.2pipsへ、「発生に乗る」は+4,186.1pipsから−1,017.3pipsへ変わりました。

勝率5割を超えた設定はあるか

年20回以上取引した設定に限ると、6つの区分すべてで勝率が50%を超えた設定はゼロ件でした。

読み方時間足対象平均勝率平均利益平均損失
戻りを取る15分足30通り43.56%76.93pips−72.33pips
戻りを取る1時間足20通り40.00%79.40pips−83.68pips
戻りを取る4時間足20通り37.43%101.46pips−132.37pips
発生に乗る15分足6通り38.78%77.89pips−72.53pips
発生に乗る1時間足4通り38.52%92.30pips−67.71pips
発生に乗る4時間足4通り34.38%137.85pips−120.82pips

「戻りを取る」という名前でも、勝率は37.43〜43.56%でした。さらに1時間足と4時間足では平均損失が平均利益より大きく、勝率だけで逆張りの優位性を確認できる結果ではありません。

フィルター・損切り・スプレッド

条件エディタの初期設定に足して測りました。すべて2025年です。

ADXフィルターは、唯一黒字だった15分足の「戻りを取る」を削るだけでした。

条件取引勝率損益
そのまま1,33447.08%+1,251.5pips
ADX(14) 20以上94546.24%+537.2pips
ADX(14) 25以上66246.53%+288.0pips
07-16 UTC のみ64046.09%−1,013.2pips
12-21 UTC のみ57449.13%+888.9pips

時間帯は片方だけ残ります。12-21 UTC は取引を6割弱に減らして損益を+888.9pipsに保ちますが、07-16 UTC は符号が反転して−1,013.2pipsです。片方が効いてもう片方が壊れる形は、フィルターというより期間の切り分けに近いので、そのまま使う根拠にはなりません。

損切り・利確は15分足でわずかに上積みし(SL30/TP60で+1,354.1pips、SL50/TP100で+1,312.0pips、そのままが+1,251.5pips)、赤字だった4時間足では損失を縮めます(そのまま−2,107.5pips → SL30/TP60で−132.0pips)。赤字を小さくしているだけで、黒字にはなりません。

スプレッドは、このシリーズで毎回そうなる形になりました。

読み方時間足取引スプレッド00.3pips1.0pips損益分岐
戻りを取る15分足1,334+1,651.6pips+1,251.5pips+317.7pips1.238pips
発生に乗る15分足1,211+1,204.0pips+840.7pips−7.0pips0.994pips
戻りを取る1時間足321−2,926.8pips−3,023.1pips−3,247.8pipsなし

スプレッドで失うpipsは、取引回数×スプレッドと一致します。 6通りすべてで、予測と実測の差は0.1pips以内でした。15分足で黒字だった2つは、スプレッドが1.238pipsと0.994pipsを超えると消えます。実際のドル円ならまだ余裕がありますが、年1,200回以上取引する設定の余裕としては薄いほうです。

関連する記事として、FVGを含む枠組みを価格パターンへ分解したSMCの構造ブレイクと流動性スイープがあります。同じ「描画ツールを条件に昇格させて測る」形はフィボナッチ・リトレースメントで作りました。基準率を先に数えてから条件を評価する形はGMMA、指標が別の既知のものと同じだった例はCCIにあります。勝率と損益の向きについてはボリンジャーバンドが対照になります。

補足

  • ドル円1本のみ。 通貨ペアを変えると変わる可能性があります。とくに帯の幅は値動きの大きさに直結します
  • 2024年と2025年の2年だけです
  • 決済は反対シグナル。 実際にこのパターンを使う人は、帯の反対側に損切りを置いたり、直近の高安まで持ったりします。その形は測っていません
  • 「戻る」の定義は帯の端に触れた時点。 終値で判定する流儀もあり、その場合の数字は変わります
  • 時間帯フィルターは2つの窓のうち片方だけを設定して測っています。 実運用でどの時間に絞るかは、ここで測った2つ以外にもあります
  • 上位足のギャップを下位足で使う形は測っていません。 この検証は各時間足の中で完結しています

よくある質問

フェアバリューギャップは本当に埋まりますか?
埋まります。ドル円で数えると96.2〜99.4%(15分足・1時間足・4時間足×2024年と2025年の6区分)が、その後で価格に戻られていました。ただしこの数字は、フェアバリューギャップについて何も言っていません。強気ギャップの天井は3本目の足の安値そのもので、「ギャップが埋まった」は「その足の安値に価格が戻った」と同じ文です。ギャップを作らなかった足で同じことを数えると97.2〜99.4%で、6区分すべてでギャップの足のほうがわずかに戻られにくいという結果でした。
フェアバリューギャップが埋まるまで何本かかりますか?
中央値は2本です。6区分すべてで2本でした。次の1本で埋まったものが41.9〜46.1%、3本以内が62.3〜64.1%を占めます。つまり「価格が戻ってくるのを待つ」という手順は、ほとんどの場合いちども待ちません。埋まらずに年をまたいだのは15分足で36〜44件、4時間足で11〜14件でした。
フェアバリューギャップの設定でいちばん重要なのは何ですか?
ギャップの最小幅でした。15分足の「戻りを取る」読み方では、ATRの0.25倍と0.5倍がどちらも5通り中5通りで黒字、幅の下限を設けない0倍は5通り中3通り、1倍以上は5通り中0通りです。ただし黒字だったのは15分足だけで、1時間足と4時間足は年3〜4回しか取引しない設定を除いて全滅しました。有効期間(何本まで待つか)は15分足で短いほうがわずかに良い程度です。
真ん中の足が大きいフェアバリューギャップのほうが効きますか?
差は出ませんでした。真ん中の足の実体をATR比で4分割して、価格が戻ったあと10本でギャップの向きに動いた割合を数えると、15分足47.0〜51.8%、1時間足41.9〜53.7%、4時間足44.3〜52.8%です。どの時間足でも実体の大きさに沿って増えも減りもしませんでした。そもそも3本足の判定式は真ん中の足を一度も読みません。
フェアバリューギャップはMT4やTradingViewで表示できますか?
どちらも標準では入っていません。MT4とMT5は同梱インジケーターにフェアバリューギャップが無いので、カスタムインジケーターを自分で入れることになります。TradingViewも標準のインジケーター一覧には無く、公開スクリプトから追加します。Formiqのチャートにはパターンの分類で入っていて、埋まっていないギャップだけを出す・最小幅で細いものを落とす、の2つを設定できます。バックテスト側でも条件として使えます。

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