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ダマシ回避フィルターは効くのか?1,596通り検証した結果

ADXが25以上のときだけ売買する、移動平均線が上向きのときだけ買う。ダマシを減らすと言われるフィルターを、公開済み38通りの設定へまとめて掛けました。ランダムに同じ数だけ間引いた場合と区別がつきません。

「シグナルが出ても、レンジ相場ならダマシになる。だからADXでトレンドの強さを測って、25以上のときだけ売買する」。ダマシを減らす方法の説明は、たいていこの形をしています。

このシリーズでは、ADXのフィルターをGMMA・CCI・アリゲーターの3つの記事で試して、4回とも成績が落ちました。ただ、3つの指標で悪くなったことは「どの指標に掛けても悪くなる」の証明にはなりません。

そこで、公開済みの記事に載せた設定38通りへ、同じ6つのフィルターをまとめて掛けました。 3つの時間足と2年分、フィルターなしを含めて1,596通りです。

ADXの3つの水準(20・25・30以上)は、3つの時間足すべてで「2024年と2025年の両方で黒字だった設定の数」を減らしました。9区分すべてです。 15分足は13通りから6・4・7通りへ、1時間足は27通りから18・10・12通りへ、4時間足は16通りから14・11・12通りへ落ちています。

そして、フィルターが落とした売買が本当に負けていた売買なのかを、同じ回数をランダムに落とした場合と比べました。1,348通りの比較のうち範囲の外へ出たのは72通り。何も仕分けていなくても、偶然で約67通りは外へ出ます。

0102030202530DI5020015分足202530DI502001時間足202530DI502004時間足両年黒字の設定数(38通り中)
フィルターなしより少ないフィルターなしより多い点線=フィルターなし(38通り中)
2024年と2025年の両方で黒字だった設定の数です(公開済み38通り中)。棒は左からADX20・25・30以上、+DIが−DIより上、50本と200本の移動平均が上向き。18本のうち13本がフィルターなしの線を下回り、ADXの9本はすべて下回りました。

ADXと移動平均線の傾きの設定と読み方

この記事で使うフィルターは2つの指標から作ります。どちらもFormiqのバックテスト条件にそのまま入っています。

ADXは価格チャートの下の別枠に3本の線で表示されます。ADX本体(トレンドの強さ)、+DI(上昇の勢い)、−DI(下降の勢い)です。ADXは0から100の値を取り、大きいほどトレンドが強いと読みます。MT4では水準線が初期状態では引かれないので、20や25の線は自分で追加します。

移動平均線の傾きは価格チャートに重なる普通の移動平均線を1本引き、その線が数本前と比べて上がっているか下がっているかだけを見ます。線そのものは表示されますが、傾きの判定は画面に出ません。

条件数値の項目初期設定成立の中身
ADX期間14何本分の値動きから計算するか
ADX最低水準25ADXがこの値以上でなければ売買しない
ADX読み方水準のみ水準のみ/DIの比較/DIのクロスの3つから選ぶ
移動平均線の傾き期間20何本の平均を引くか
移動平均線の傾き計算方法SMA単純・指数・加重などから選ぶ
移動平均線の傾き判定の間隔5何本前と比べて上下を決めるか
移動平均線の傾き向きどちらでも上向きのみ買い/下向きのみ売り/どちらでも

フィルターとして使うときの読み方

ADXの読み方を「水準のみ」にすると、ADXが最低水準以上の足では買いと売りの両方を認め、下回っている足ではどちらも認めません。これが「トレンドの強さで絞る」という意味です。

「DIの比較」にすると、+DIが−DIより上の足では買いだけ、下の足では売りだけを認めます。移動平均線の傾きを「どちらでも」にした場合も同じ作りで、上向きなら買いだけ、下向きなら売りだけです。この2つはトレンドの強さではなく向きで絞ります。

条件一覧で元の条件と一緒に有効にし、判定を「すべて満たす」にすると、両方が同じ向きを指した足だけが残ります。

ダマシ回避フィルターは何本の足を捨てているのか

フィルターを評価する前に、そもそも何本を落とせるのかを数えます。ほとんどの足で成立する条件は、何も絞れません。

2025年の全足に対して、それぞれのフィルターが売買を認めた割合です。

フィルター15分足 買いを認めた1時間足 買いを認めた4時間足 買いを認めた
ADX 20以上61.22%66.33%67.20%
ADX 25以上40.51%47.24%37.58%
ADX 30以上25.15%31.40%17.58%
+DIが−DIより上49.85%45.87%41.24%
50本移動平均が上向き50.09%48.35%55.16%
200本移動平均が上向き48.50%54.61%60.81%

ADXは水準を上げるほど通す足が減ります。25以上にすると37.58%から47.24%の足しか通さず、30以上なら17.58%から31.40%まで落ちます。

向きで絞る3つは、足を1本も捨てていません。 +DIと−DIはどちらかが必ず上ですし、移動平均線もどちらかへ傾いています。ここに並べた割合は買いを認めた足のぶんで、残りの足では売りを認めています。捨てているのは「買いたいのに下向き」という組み合わせだけです。

ADXが高い足のあとに何が起きているか

フィルターの前提は「トレンドが強い足のあとは、その向きに動きが続く」です。2025年の全足をADXの値で4つに分け、10本後の終値までに何pips動いたかを測りました。

時間足ADX本数10本後までの値幅ATR比直前の向きに続いた割合
15分足20未満9,654本19.81pips1.8650.58%
15分足30超6,264本20.92pips1.6548.77%
1時間足20未満2,096本42.45pips1.9150.52%
1時間足30超1,947本44.52pips1.7547.82%
4時間足20未満519本82.66pips1.8151.64%
4時間足30超283本95.61pips1.8443.82%

「直前の向きに続いた割合」は、その足までの5本の値動きと、その足から10本後までの値動きが同じ符号だった割合です。

**値幅は確かに少し広がります。**15分足で19.81pipsから20.92pips、4時間足で82.66pipsから95.61pipsです。ところが同じ値幅をその足のATRで割ると、15分足は1.86から1.65へ、1時間足は1.91から1.75へ縮みます(4時間足だけは1.81から1.84へ増えます)。ADXが高い足はその足自体が大きいので、pipsで見た値幅の広がりは、足の大きさの広がりでほとんど説明がつきます。

**向きのほうはもっとはっきりしています。**2つの年と3つの時間足を合わせた24区分で、続いた割合は43.82%から53.45%の間に収まりました。ADXが30を超えた足のほうが20未満の足より続きやすかったのは、6区分のうち1つ(1時間足の2024年、53.45%対51.16%)だけです。

検証の条件

項目
通貨ペア米ドル/円
時間足15分足・1時間足・4時間足
期間2024年1月1日〜2025年12月31日
元の設定公開済みの記事に載せた38通り
フィルターADX20・25・30以上、+DIが−DIより上、50本と200本の移動平均が上向き
足す場所エントリー条件のみ。決済は記事が公開した通り
比べる相手フィルターなしの売買から同じ回数をランダムに選んだ1,000回
回した数38通り×7条件×3時間足×2年=1,596通り
スプレッド0.3pips固定
ロット0.1
約定終値

**元の設定はこちらで選んでいません。**公開済みの記事それぞれに「この設定で走らせる」ボタンが付いていて、その設定をそのまま使いました。検証した時点で公開済みのボタンは43件で、そのうち3件を対象から外しました。DMI/ADXの記事はすでにADXを使っていて、1つの条件セットにADXの設定は1組しか入りません。明けの明星・宵の明星の記事は2つの条件をORで結んでいるので、3つ目を足すと絞り込みではなく追加になります。この記事のボタンはフィルターを掛けたあとの設定なので、掛ける前の一覧には入りません。残る40件のうち、ボリンジャーバンドの3記事が同じ設定(期間20・2σのブレイク)なので1つにまとめ、38通りとしました。

決済は動かしていません。「エントリーのダマシを減らす」という話なので、エントリー条件にだけフィルターを足します。決済も同時に変えると、エントリーではなく決済を測ることになります。

38通りの設定に同じフィルターを掛ける

年間損益がプラスで終わった設定の数です。38通り中の数で書きます。

フィルター15分足 20251時間足 20254時間足 202515分足 20241時間足 20244時間足 2024
なし202920173431
ADX 20以上112622162727
ADX 25以上112223141923
ADX 30以上162021142524
+DIが−DIより上212413253233
50本移動平均が上向き202818343035
200本移動平均が上向き221428213531

1年だけを見ると、良くなった区分も悪くなった区分もあります。4時間足の2025年はADX25以上で20通りから23通りへ増え、15分足の2024年は50本の傾きで17通りから34通りへ増えました。

そこで2つの年をそろえます。2024年と2025年の両方で黒字だった設定の数です。

フィルター15分足1時間足4時間足
なし132716
ADX 20以上61814
ADX 25以上41011
ADX 30以上71212
+DIが−DIより上152212
50本移動平均が上向き182317
200本移動平均が上向き161321

**ADXの行は9つのマス全部でフィルターなしを下回りました。**いちばん減ったのは1時間足のADX25以上で、27通りから10通りです。

向きで絞る3つはばらけています。50本の傾きは15分足と4時間足で増やし(13→18、16→17)、1時間足で減らしました(27→23)。200本の傾きも15分足と4時間足で増やし、1時間足では27通りから13通りへ減らしました。

勝率は上がるのに年間損益が減る

MACDの記事に載せた12/26/9のシグナル線とのクロスに、ADX25以上のフィルターを足しました。1時間足です。

条件取引回数勝率1回あたり年間損益
2025フィルターなし451回38.58%+4.93pips+2,223.6pips
2025ADX25以上204回40.69%+2.21pips+451.0pips
2024フィルターなし423回39.95%+7.45pips+3,152.1pips
2024ADX25以上168回46.43%+8.03pips+1,349.2pips

**2年とも勝率は上がりました。**2025年は2.11ポイント、2024年は6.48ポイントです。**2年とも年間損益は減りました。**2025年は1,772.6pips、2024年は1,802.9pipsの減少です。

2024年は1回あたりの損益も+7.45pipsから+8.03pipsへ上がっています。それでも年間で1,800pips近く減るのは、取引回数が423回から168回へ落ちるからです。1回あたりが0.58pips良くなっても、255回ぶんの利益は戻りません。

落とした売買は、本当に負けていた売買か

フィルターが落とした売買が負けていた売買なら、残った売買の1回あたりの損益は全体より良くなるはずです。

同じMACDで確かめます。1時間足の2025年、フィルターなしの451回のうちADX25以上を満たしていたのは204回で、残る247回が落ちた売買です。

売買回数勝率1回あたり
フィルターなしの全部451回38.58%+4.93pips
ADX25以上で残った204回40.69%+2.21pips
ADX25未満で落ちた247回36.84%+7.18pips

**落ちた247回は1回あたり+7.18pips、残った204回は+2.21pipsでした。**勝率は残った側のほうが高いのに、稼いでいたのは落とした側です。

ただし、売買を減らせば1回あたりの平均は動きます。標本が小さくなるほど、その平均から離れやすくなるからです。**だから比べる相手は「同じ回数をランダムに落とした場合」です。**この451回から204回を無作為に取り出す操作を1,000回繰り返すと、1回あたりの損益は−1.38pipsから+11.55pipsの間に収まりました。ADX25以上の+2.21pipsはその中です。勝率のほうも34.31%から43.63%の範囲で、40.69%は中に入ります。

38通り×6フィルター×3時間足×2年で1,368通り。うち20通りは全部通すか全部落とすかで、比べる相手がありません。残り1,348通りの結果です。

フィルター比べた数1回あたりが全体を上回った範囲の外へ出たうち上側
ADX 20以上22595111
ADX 25以上22792158
ADX 30以上2261031513
+DIが−DIより上21512084
50本移動平均が上向き2271472119
200本移動平均が上向き22814922
合計1,3487067247

**1回あたりの損益が全体を上回ったのは706通り、52.4%です。**コインを投げても同じくらいになります。

**範囲の外へ出たのは72通り。範囲は中央の95%なので、何も仕分けていなくても偶然で約67通りが外へ出ます。**勝率で同じことをすると、外へ出たのは67通り(上側44、下側23)でした。

なお、この1,348通りの比較は互いに独立ではありません。同じ売買を6つのフィルターで切り分けていますし、時間足と年もまたいでいます。ですから「72対67」は検定の結果ではなく、フィルターの仕分けが偶然と見分けのつく大きさになっていないという読み方です。

助かったのは、フィルターなしで負けていた設定だった

仕分けていないのなら、フィルターが年の結果を動かしたぶんは何なのか。38通りをフィルターなしの年間損益で並べ、下位19通りと上位19通りに割って数えました。**それぞれの設定について、6つのフィルターのうち結果を見てから一番良かったものを選んでいます。**後知恵で選んでも改善しないなら、そのフィルターは本当に使えません。

時間足・年下位19通りで改善した数中央値の変化上位19通りで改善した数中央値の変化
15分足 202519+891.6pips10+35.9pips
15分足 202419+2,228.2pips18+976.4pips
1時間足 202517+413.1pips1−462.1pips
1時間足 202417+519.2pips8−177.4pips
4時間足 202519+1,012.5pips17+248.7pips
4時間足 202419+911.2pips9−66.3pips

フィルターなしで損していた19通りは、6区分すべてで17通りから19通りが改善しました。稼いでいた19通りは1通りから18通りです。

1時間足の2025年が分かりやすい例です。いちばん助かったのはフェアバリューギャップの設定で、−3,491.7pips(174回)がADX30以上で−2,230.8pips(83回)になりました。1,260.9pipsの改善ですが、まだ赤字です。逆にいちばん落ちたのはウェーブトレンドで、+3,283.4pips(867回)が、6つのうち一番良いものを選んでも+1,955.5pips(436回)でした。

**フィルターは、負けていた設定を持ち上げ、稼いでいた設定を押し下げました。**売買を仕分けているなら、フィルターなしの成績がどちら側の設定でも同じように効くはずです。範囲の外へ出た数が偶然と変わらなかったことと、同じ結果を別の角度から見ています。

前年に効いたフィルターを翌年も使えるか

このシリーズでは毎回、片方の年で一番だった設定を相手の年に当てています。フィルターでも同じことをしました。2024年の成績が一番良かったフィルターを設定ごとに選び、それを2025年に使います。

時間足2024年に「なし」が一番だった設定2025年にフィルターなしを上回った設定2025年に黒字で終わった設定
15分足1/3819/3818/38
1時間足13/385/3824/38
4時間足10/3814/3819/38

左の列が示しているのは、2024年のデータだけを見れば、114通りのうち90通りで「何かフィルターを足したほうが良かった」ように見えるということです。

その選択を翌年に持ち込むと、フィルターなしを上回ったのは114通り中38通りでした。1時間足に至っては38通り中5通りです。

方向のフィルターが2024年だけ強かった理由

はっきり効いた区分が1つあります。15分足の2024年で、50本移動平均の傾きは38通り中36通りを改善し、年間損益の中央値を−205.9pipsから+1,157.3pipsへ動かしました。この36通りは、6つのフィルター×3時間足×2年の36区分で最も多い改善数です。

この年の米ドル/円は、15分足の終値で140.8655から157.1975まで、1,633.2pips上昇しています。2025年は157.2375から156.67で、−56.8pipsでした。

**「50本平均が上向きのときだけ買う」は、上げ相場では買いを通して売りを止めるルールです。**同じフィルターを2025年の15分足に掛けると改善は20通りにとどまり、中央値も+87.1pipsから+32.3pipsへ下がりました。

向きのフィルターがしているのは、ダマシを避けることではなく、**その年に価格が進んだ側へ寄せることです。**どちらへ進むかを先に知っていれば効きますが、それが分かっているならフィルターは要りません。

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補足

  • 対象は米ドル/円のみです。2024年と2025年の2年分で、時間足は15分足・1時間足・4時間足です
  • 約定は終値、スプレッドは0.3pips固定、ロットは0.1、スリッページはありません
  • 元の設定38通りのうち、MACDの記事(シグナルクロス12/26/9)とOsMAの記事(12/26/9)は42回の実行すべてで取引回数も損益も一致しました。OsMAはMACDとシグナル線の差なので、そのゼロクロスはMACDのシグナルクロスと同じ足になります
  • ランダムの範囲は固定した種の乱数から作っているので、同じ数字が再現できます

よくある質問

ADXフィルターは意味がないのですか?
この検証の範囲では、エントリーを絞る道具としては働きませんでした。ADXの3水準を3つの時間足に掛けた9区分すべてで、2024年と2025年の両方が黒字だった設定の数が減っています。ただし取引回数は確実に減るので、同じ設定を少ない回数で回したいときには使えます。4時間足の2025年はADX25以上で38通り中29通りが改善しましたが、同じ条件の2024年は10通りしか改善していません。
なぜ勝率は上がるのに損益は増えないのですか?
フィルターは売買を減らす操作なので、勝率は小さい標本の揺れとして動きます。同じ回数をランダムに間引いた場合の範囲と比べると、1,348通りの比較のうち勝率が範囲の外に出たのは67通りで、偶然に期待される数とほとんど同じでした。4時間足の2025年はADX30以上で勝率の中央値が42.05%から44.00%へ上がりますが、取引回数は4,660回から847回へ減ります。
移動平均線の傾きで絞るのはどうですか?
2024年の15分足では38通り中36通りが改善し、年間損益の中央値も−205.9pipsから+1,157.3pipsへ動きました。ただしこの年は米ドル/円が1,633.2pips上昇しています。同じ50本の傾きを2025年の15分足に掛けると改善は20通りにとどまり、中央値も+87.1pipsから+32.3pipsへ下がりました。
どのフィルターも効かないなら何を変えればいいですか?
この検証が示しているのは「エントリーを後から絞っても、落ちるのは負けだけではない」ということです。取引回数が減れば往復のスプレッドも減るので、回数の多い設定でコスト負けしている場合は効果があります。1時間足の2025年でいうと、フィルターなしの38通りは合計17,528回、ADX25以上では7,860回でした。
Formiqでフィルターを試せますか?
試せます。バックテストの条件一覧でADXまたは移動平均線の傾きを追加で有効にし、判定を「すべて満たす」にすると、元の条件とフィルターの両方が同じ向きを指した足だけが残ります。この記事の1,596通りもその形で回しました。

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